時間外受診の抑制


時間外救急:軽症者から8400円特別徴収…埼玉医大計画(cache) 毎日新聞 2007年11月11日

 同センターによると、時間外の救急患者は94年に年間約1万人だったが、06年は約4万人に増加した。診療体制がパンク寸前になったため、軽症の受診者数を減らす方法を模索。その結果、紹介状がなく、入院を必要としない患者に対し、特別料金の徴収で負担を増やし、受診者数を絞ることにした。既に張り紙などで周知を始めている。


解説:時間外軽症、患者負担増 医療体制維持、苦肉の策−−「見極め」巡り混乱も(cache) 毎日新聞 2007年11月11日

 埼玉医大総合医療センターが、時間外の軽症患者に特別徴収金を負担してもらう背景には、過酷な勤務を嫌う医師が病院を辞める「医療の危機」や「医師不足」がある。同センターは受診者数を減らし体制を守る苦肉の策と強調するが、素人が軽症と重症を見極めるのは難しく、混乱も予想される。


救急外来を受診された患者さんから一律8400円を徴収,入院の有無に関わらず緊急性ありと判断されたら免除されるとのことです。追加徴収免除を目的とした救急車要請が増えることも心配されますが,

救急車で搬送された患者でも軽症なら徴収する予定。

と明言していますので,受診の制限に関してはかなりの本気度が伺えます。いわゆる「コンビニ受診」により医療側の負担が増大して医療事故の誘因となること,何よりも本来医療を必要とする患者さんの受診が阻害されることが問題となっています。当然のことながら対応する医療スタッフの体力も気力も無限ではありません。実際の徴収方法や低所得者に対する配慮といった課題もあるでしょうけど,追加徴収は「共有地」を守るためのひとつの試みではあると思います。


懸念されるのは過度な受診抑制が生じて,本来受診すべき方が受診しないケースでしょう。現状で「コンビニ受診」による受診の阻害が生じていることも念頭に置いて,過度な受診抑制が生じにくく「コンビニ受診」をある程度抑制できるというところで8400円という設定が妥当かどうかです。いろいろな意見があるでしょうけど,個人的には以前から1万円ぐらい頂いてもいいと考えていて,それほど無謀な額ではないと思います。


「非医療者に軽症か重症かの判断は難しい」という声も当然上がるでしょう。100%確実な判断は例え医療者であっても(時間外ではなおさらです)できないわけで難しいのは当然なのですが,それでも本当にこの時間の受診が必要なのか,救急車を要請する必要があるのか,自分なりによく考えてから受診することは,本来は追加徴収の有無に関わらず必要なことです。そしてメディアも常日頃から「患者の権利」の重要性を主張するのであれば,こういうときこそ「素人だから難しい」と逃げるよりも,受診する側の「責任」についてきちんと言及するべきではないかと思います。