看護師による医療行為


看護師:患者への投薬量判断、容認へ…医師負担減で厚労省(cache) - 毎日新聞 2008年1月14日

 通知は、薬剤投与量の増減を「医師の指示の下で行う看護」と明記。患者の病状が急変した際は医師が不在でも、事前に受けた医師の指示の範囲内であれば看護師による投薬量の調節を認める。また、糖尿病など慢性病患者への生活指導や静脈注射は、看護師にも可能とし、「医師を専門性の高い業務に集中させる」としている。


病状が急変して看護師の判断で投薬量を調節するという状況があまり想像できないんですが…。事前に受けた範囲の調整で対処できる事態を急変と呼ぶべきなのかも謎です。予測された範囲で状況が変わった場合にそれに応じて「投与量を変えるという指示」なら普通に出していたし,予測範囲外の事態なら直接医師の指示を仰ぐのは当然だと思ってましたが,それでは医師の業務が多すぎるということなんでしょうか。状況の変化に応じて治療方針を修正するという行為は,まさに医師本来の仕事だと思うのですが。


そもそも看護師も過剰労働だというのに,業務が過剰だから看護師にやらせればいいという発想からして現場を無視しているわけです。かなり好意的に解釈すれば大学病院の看護師を想定しているのかも知れませんが,やるつもりがないひとたちはお墨付きが出てもやらない理由はいくらでも考えつきますから*1,あまり効果は期待できないでしょう。


このアイディアが元はといえば規制改革会議から出ている*2というあたり,医師負担減というお題目も素直には受け取れないというのが正直なところです。「勤務医の負担改善」というお題目が「病院の診療報酬優遇」から「診療所再診料削減」という結論にすりかわった経過を考え合わせるとなおのことです。


内科開業医としては「糖尿病など慢性病患者への生活指導」が専門性の低い業務というのはどうにも納得できないところです。再診料もそうですが形に残らない行為なので評価が低いということもあるんでしょうけど,あえて邪推すると,特定疾患療養管理料を削減するために外堀を埋めているのかも知れません。もしそうならこういう文言を入れたことは理解できます。もちろん同意はしませんが。