H20年度診療報酬改定(案)が発表されたわけですが


厚生労働省 - 中央社会保険医療協議会総会平成20年2月13日資料


先程目を通してみました。医療費そのものの大枠は先に決まっていて,その中でどう配分するかという話なのでいまさら驚くようなものはなかったと思います。大手新聞は「医師会の抵抗で開業医の再診料は据え置き」という論調で相変わらずなんですが,朝日新聞の記事(cache)だと「勤務医対策」さえ「増える入院負担」という見出しになっていて,むしろそちらのほうがビックリしました。

当方にとって直接影響がありそうなのは後期高齢者関連,診療時間外加算,病診連携あたりでしょうか。後期高齢者診療料(600点)の新設については,前記の朝日記事ではこうなってました。

 後期高齢者医療制度が4月に始まるのに伴い、お年寄りの慢性疾患を総合的、継続的に診る外来の主治医への報酬(月6000円)を新設。1カ月に行う検査や治療費は、この中にすべて含まれる「包括払い」とする。患者は再診料や薬代などを除き、1カ月に何回受診しても負担は変わらない。

厚生労働省の改定案では要件は次のようになってます。

[算定要件]

  1. 保険医療機関である診療所又は当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しない病院
  2. 入院中の患者以外の患者であって別に厚生労働大臣が定める慢性疾患を主病とするものに対して、後期高齢者の心身の特性を踏まえ、患者の同意を得て診療計画を定期的に策定し、計画的な医学管理の下に、栄養、運動又は日常生活その他療養上必要な指導及び診療を行った場合に算定できる
  3. 診療計画には、療養上必要な指導及び診療内容、他の保健・医療・福祉サービスとの連携等を記載すること
  4. 毎回の診療の際に服薬状況等について確認するとともに、院内処方を行う場合には、経時的に薬剤服用歴が管理できるような手帳等に薬剤名を記載する
  5. 患者の主病と認められる慢性疾患の診療を行う1保険医療機関のみにおいて算定する
  6. 当該患者に対して行われた医学管理等、検査、画像診断、処置は後期高齢者診療料に含まれる。ただし、病状の急性増悪時に実施した検査、画像診断及び処置のうち、550点以上の項目については別途算定できる
  7. 当該診療所(又は医療機関)に次のそれぞれ内容を含めた研修を受けた常勤の医師がいること
    • 研修事項
      • 高齢者の心身の特性等に関する講義を中心とした研修
      • 診療計画の策定や高齢者の機能評価の方法に係る研修

[対象疾患]
糖尿病、脂質異常症、高血圧性疾患、認知症

これを読む限りでは診療料が要件を満たした場合算定できる,というだけで,従来通り出来高払いも可能だと思うんですが,上記の記事だとすぐに高齢者全員が包括払いになるように受け取れます。意図的なのか分かりませんが一般の方にとっては無用な混乱を招く書き方です。「1カ月に何回受診しても負担は変わらない」って,再診料や処方は無視ですか…。

厚労省としては「無駄な検査をして収入を増やすのを防ぐ」という主旨なんでしょうけど,見方を変えれば「必要な検査もしない方が実質収入が増える」とも言えます。医学管理料に加えて基本的な血液検査と心電図を月1回行うと限度額はすぐ一杯になる程度の定額ですから,「必要な検査をしていたら収入にならない」ともいえるわけで,不必要な検査を抑えるメリットよりも,必要な検査が実質的に制限されるデメリットの方が大きいと予想します。

慢性疾患が主体の開業医以外にとっては何のメリットもなく*1,むしろ外来管理加算の削減とあっては恨みの対象になりそうな項目ですが,いずれにしろ6000円というエサ(?)でハシゴを登らせて,いずれ包括払いのみにしたうえで,定額自体も削減していくのは今からミエミエではあります。ついでに言うと,この診療料の要件にある「研修を受けた常勤の医師がいる」あたりから,微妙に利権の香りも漂ってくるのですが…。


できることなら零細開業医の意地としてそんな誘導に乗らずにこれまで通りの診療を続けていきたいものです。


 

*1:半径4キロの区域内に医療機関がない地域は、北海道で14カ所、長野県で1カ所、三重県で2カ所→http://www.cabrain.net/news/article/newsId/13604.html