パンデミックフルー
旅行中に読んだ本その1。
H5N1―強毒性新型インフルエンザウイルス日本上陸のシナリオ
- 作者: 岡田晴恵
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 単行本
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H5N1型鳥インフルエンザに由来する強毒型ウイルスがヒト型に変化し,新型インフルエンザが全世界にパンデミックを引き起こす過程を描いたシミュレーション小説です。フィクションではありますが,まだ誰も免疫を持っていない感染症が現在の日本に持ち込まれたらどうなるか,と冷静に考えたらどう考えても恐ろしい事態になることは当然予測できるわけです。
この本にリアリティがあるのは,現実に分かっていることを背景にして,ひとつひとつはいかにもありそうな経過を積み重ねているからでしょう。巷のトンデモ本に登場するような秘密組織の謀略とか政府の陰謀といった分かりやすい敵がいるわけではなく,ごく普通の市民の悪意のない行動*1が結果として破滅を引き起こすというあたりは,実感として理解できます。現実には,悪意がない行為への対応はむしろ難儀することが多いものです。
どなたかが医療とは国家保障であると仰っていましたが,パンデミックフルーに関してはまさしく「戦争」そのものです。国民が好きなところに移動したり,住みたいところに住んだりといった権利を制限しなければならないし,食料や医薬品といった必需品も市場原理に任せるわけにはいきません。もちろん「戦争」にはそれなりの準備も必要なんですが*2,いざその時になって躊躇なく「戦争」の宣言ができるかが明暗を分けるとも言えそうです。
自分自身に関しても,「戦争」に備えて何を準備し,何を覚悟しておくべきなのか,わりと真剣に考えているところです。