医療破壊



今週の週刊東洋経済の特集は「医療破壊」。タイトルが「崩壊」よりさらに進んで「破壊」となっているあたりはインパクトがありますね。立ち読みするには記事のボリュームが多すぎるので買ってみました。昨年の春にも「ニッポンの医者・病院・診療所」と題して医療崩壊を取り上げていましたが,今回はさらに掘り下げた取材を行っています。


銚子市立総合病院の閉鎖と近隣施設への影響をはじめとして,舞鶴市民病院の崩壊後の経緯,奈良産科救急の実状について,報じられた事実だけでなくその背景まで取材したり,裏付けとなるデータを提示しています。特に産科救急の問題は搬送の体制だけでなく,NICUの不足もキチンと指摘しているあたりは評価すべきでしょう。いずれにしても全体を通して読めば,現場の努力や工夫で何とかできる段階はとうに過ぎていて,崩壊が進んでいくのを見ているしかない状態である,という結論にならざるを得ないように思います。


個人的には,崩壊を声高に叫ぶだけでなく,避けられないであろう崩壊をどのように受け入れるかという議論がそろそろ出てこないと,そのあと日本の医療は将来どのようにあるべきなのかという議論も始まらないような気がします。とはいえ世の中の認識としては,医療崩壊など認めない,という死の受容の5段階でいうところの「否認」の段階,あるいは誰かの責任を追及しようとする「怒り」の段階にある方が多いように見受けられますので,やはり崩壊しているという事実は事実としてきっちり告知する必要はあるのでしょう。