介護認定審査会の予習


4月から始まる介護認定審査会に向けて先日説明会が行われた際に「介護認定審査委員テキスト」という冊子が配布されて担当者から説明があったのですが通り一遍の説明で理解できるはずもなく,審査会までにテキストに目を通しているところです。介護認定の詳しい仕組みは今回勉強して知ったことが多いのですが,当方の理解では

  1. 調査員による患者宅での基本調査(74項目)を行う。
  2. 基本調査の結果から「基準時間」が独自のアルゴリズムに基づいて機械的に算定される。
  3. 基準時間から介護度の一次判定が決定される。
  4. 審査会において基本調査での特記事項や主治医意見書の記載を考慮して一次判定を修正・確定する。


という手順で介護度が決定するようです。基本調査の結果から算出される「基準時間」というのが分かりにくいのですが,介護施設での調査でのデータ(サンプル数3400)をもとに設定された数値らしく,これを基準に判定を行うということは,同一の条件下において,心身の状況が全く同じ高齢者であれば,必要とされる「介護の手間」も同じになるという仮定に基づいていることになります。もちろん在宅を含めて同一の条件下で介護が行われていることなどあり得ませんから,実状にそぐわない一次判定が出てくることは十分予想されますし,おそらく実際にそうだったと思われ,来年度からは判定アルゴリズムが変更され「中間管理項目」が組み込まれることになるようですが,一方これにより新たな問題が生じることも指摘されています。


介護認定基準の変更凍結を 厚労相に団体要望 - 47news

高齢の親らを介護する家族や事業者、有識者でつくる「介護保険を持続・発展させる1000万人の輪」は12日、4月に予定されている要介護認定基準の変更を凍結し、認定方法を再検討するよう求める要望書を舛添要一厚生労働相に提出した。
「1000万人の輪」共同代表で評論家の樋口恵子さんらは提出後の記者会見で、基準変更について「要介護度を実際より軽く認定し、給付費を減らそうと狙っているのではないか」と指摘。「介護にかかる手間や時間、認知症の程度を正確に認定できるか疑問だ」と強調した。


完璧な判定システムを作ることは確かに困難なのは理解できますが,根拠が不明だったり作る過程が不透明であれば問題ですし,まして記事のように恣意的な操作が疑われるようでは利用する側からの信頼を失うことになると思います。


テキストを読む限り「多少1次判定に問題があっても審査会で修正すればよい」という建前になっているようですが,実際には膨大な認定を定められた期日までにこなさなければならず,実際にかけられる時間は認定一件当たり1分もない模様です。審査委員が1次判定に関する問題点を理解しておかないと,限られた時間のなかで不適切な1次判定を追認することになってしまう可能性があると考えられます。逆にいえば判定の不備に起因する責任が審査委員にかかってくるシステムになっているわけです。このあたりの問題をzundamoon先生が厳しく指摘されています。


要介護認定、凍結を求める意見広がる - リハ医の独白

厚労相官僚は、介護保険の問題点を市町村に問うべきと強弁している。また、要介護認定システムの不備を介護認定審査会に押しつけるつもりである。いつもながら、厚労省官僚は保身の感覚にたけている。制度設計の責任を果たすつもりはないらしい。今回の要介護認定システム変更は、利用者とその家族にとって不利益となるだけでなく、市町村にとっても、認定審査会委員にとっても、迷惑千万である。


実際に介護を必要としている方にとって不適切な介護認定が下されることは死活問題にもなり得ます。当方としてはシステムの不備をしっかり予習した上で審査会に出席する必要がありそうです。