後期高齢者医療制度の行方


厚労省の「高齢者医療制度に関する検討会」の最終報告について各紙報道がされています*1


高齢者医療で有識者が最終報告 現役の負担方法見直しも - 47news

舛添要一厚生労働相が主宰し有識者で構成する「高齢者医療制度に関する検討会」(座長・塩川正十郎財務相)は17日、最終報告をまとめた。現役世代からの高齢者医療向け拠出金の負担方法見直しを、有力な選択肢として盛り込んだ。

後期高齢者という呼び方が気に入らない」とか「年金から天引きするとは何事だ」という声も当然あるでしょうけど,今後医療制度を維持していくことを考えれば,世代による負担の見直しというのはポイントでしょう。その点舛添厚労相による「後期高齢者医療制度国民健康保険を一体化する」「75歳以上も被用者保険に継続加入」という私案は検討に値すると個人的には思っていたのですが,今回の検討会では「選択肢の一つ」となったようです。要は棚上げになったということなんでしょうか。

現役世代からの拠出金については、現行の各保険の加入者数に応じた負担を見直すよう提案。財政力がある健康保険組合の負担を増やし、財政が厳しい場合は負担を軽くする「応能」の助け合いという考え方を示した。

企業の抱えている保険組合の中にも余裕のあるところと厳しいところがあって,単純に頭割りだと厳しいところが政府管掌保険に逃げてしまうという問題が出てきたのでそれに対する対策は必要でしょう。社会保障における企業の負担が相対的に少ないと考えれば,余裕のある企業がもっと負担するべきという発想は当然あっていいと思います。むしろ,この方針に対して否定的な発言をするのは誰なのか,という点に注目するのも良いかも知れません。


そういう目で各紙報道を読むと「制度の名称変更」をメインに取り上げながら負担割合の見直しについてはほとんど触れていない*2というスタンスで統一されているという不思議な現象が見受けられます。読売新聞に至っては社説でダメ押しのように

国民の反発の大きさに、大あわてで始めた見直し作業は、空振りに終わったようだ。

抜本的見直しが一朝一夕にはいかない以上、まずは現行制度の改善と安定に取り組むべきだろう。

日本医療政策機構の世論調査では、現行制度を基本的に維持すべきだとする人が48%に達した。この回答は70歳以上の層では56%に上り、他の年齢層より多い。元の老健制度に戻してほしいという人は、全体の3割に満たない。

この検討会での提案を否定にかかっているのが印象的でした。ちなみに日本医療政策機構ってどこかで聞いた覚えがあると思ったらこれでした。


http://www.healthpolicy-institute.org/ja/report/doc.php?id=150


こんな風に都合の良いときに都合の良いアンケートを出してくる団体とはどんなものなのか興味を覚えます。そういえば少し前にこの団体が取り上げた見解が物議を醸したのも記憶に新しいところです。サイトを見てもログインしないと閲覧できない資料が多いのですが,個人的にはあまり入会しようという気にはなりません。



 

*1:3月18日現在厚労省サイトに議事録は上がっていないのでさしあたり報道から得られる情報による考察です。

*2:権丈先生のサイトにあるこちら(PDF)を読むと検討会の印象がずいぶん違います。