予防接種への動機づけ


昨年4月から3期(中学1年)と4期(高校3年)を対象とした麻疹風疹混合ワクチンの定期接種(公費負担)が始まっているのですが,集団接種ではなく個別接種と言うこともあり,各家庭に通知された年度当初こそはある程度接種を受けたものの,結局はそれほど接種率は高くない状況らしいと聞いていました。


ところがなぜか3月頃から4期(高校3年)の対象者が急に接種を受けに来ることが多くなってきました。理由を聞いてみると定期接種の期限が迫っているからというだけでなく,進学先(大学など)で入学手続時に麻疹の接種歴を提出するよう求められたり,未接種の場合は接種を勧められたりするケースがあるようです。単純な駆け込みにしては3期(中学1年)の接種はほとんど増えてませんから,要因としてはこちらのほうが大きいと思われます。一昨年に集団感染が大々的に報道されていましたから,責任回避という意味でも進学先の学校としてはこれを未然に防ぎたいというのはごく普通の発想でしょう。


進学や就職前に予防接種を済ませておくという考え方が普及すれば,「面倒だから接種しない」という方にとっては接種を受ける動機づけにはなるでしょう。これまでのように公衆衛生学的な意義を啓蒙するよりは効果が期待できるとは思います。もっとも公的な義務づけではなく個別の学校による対応ということであれば,何らかの強い信念のもとに予防接種を受けない,もしくは子供に受けさせないという方の場合はあまり意味がないかもしれません。さらに一回でも問題が生じたら今度は責任回避のため接種歴の確認や接種の推奨をやめてしまう可能性も高いように思います。