オンコールという重圧


しばらく前に,職場の異動に伴って24時間365日いつでも呼び出しに応じなければならない状況になって以来,次第に不眠と意欲低下が強くなったという話をある患者さんから聞きました。呼び出しがあれば対応しなければならないというのは職場外であっても立派な拘束状態なわけで,それが長期間続けば本人が意識するにせよしないにせよ,心身に影響を及ぼすのは当然のことです。


ご本人いわく,ストレスそのものに加えて,オンコール業務に就いていない上司・同僚からの「でも,実際そんなに呼び出されるわけじゃないんでしょ?」といった類の無理解が相当堪えるとのことでした。そもそも拘束自体がストレスなのであって呼び出される回数の問題ではないわけですが,拘束されているだけで感じる重圧感というのは経験してみないと理解できない面はあるでしょう。少なくとも携帯電話の着信音にさえ拒否反応が生じるくらいイヤな経験であるのは確かです。


最近お会いしたときに「この話をしてまともに聞いてもらえたのは先生が初めてです」という言葉を頂きましたが,自分の経験を振り返れば,あえて共感的な診察態度を意識しなくても十分すぎるくらい共感できるというだけの話ではあります。まあ勤務医の当時は周囲の無理解というよりむしろ,主治医制という名の下に同僚全員がそれを当然として受け入れていた故に疑問を抱く余地もなかったわけで,今考えてみればそれはそれでかなり異常な状況かも知れませんけど…。