法廷における「事実」


訴訟に関する当方の知識は多分社会一般の水準ないしそれ以下と思われますのでおかしな点があればご指摘頂きたいのですが,裁判というのはそこで認定された「事実」に基づいて判断を下すところであり,提出されなかったりもしくは認定されなかった情報はなかったものとして扱われるものである筈です。従って認定されなかった情報を根拠に判決そのものを評価することは無意味ということになるのでしょう。


逆に言えば,現実世界における再発予防なりシステムの改善なりを議論するのであれば,裁判で認定された「事実」だけでは十分ではないし,裁判では争点にならなかった事実に重要な鍵が隠されている可能性もあるでしょう。紛争の解決手段としての裁判は社会にとって極めて重要な仕組みですが,それによって解決できる問題とそうでない問題は区別すべきと考えます。


もしかすると,裁判で認定された「事実」という法律用語と,日常用語としての「事実」がなまじ同じ言葉であることが混乱のもとなのかも知れません。もっとも法律の専門家にとっては別に不思議なことではないでしょうし,万が一,あえて混同するようであればミスリードを招くのは承知の上とも思えますが…。