要介護認定の見直し


要介護認定の見直しに関する検討会が昨夜開催され,要介護認定の検証資料が公開された模様です。


第3回要介護認定の見直しに係る検証・検討会の資料について - 厚生労働省

これまでの報道でははっきりしなかった一次認定結果と以前との比較が掲載されています。また,検証の結果を踏まえて判定基準を変更してシミュレーションを行い,その結果も併せて公開されています。膨大なデータから一部を引用します。


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一次判定は昨年まで大きな変動はありませんでしたが,今年度の変更により要介護度1以下の判定比率が軽症側に偏っていることが分かります。個人的には調査票と意見書から見る限り最重度と考えられるケースでも要介護度4の判定が何件かあって気になっていたのですが,資料を見る限り要介護度4,5の比率には大きな変化はないようです。

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二次判定の比較でも,昨年度以前より軽度の比率が増えています。経過措置により申請者側から「以前と同じ要介護度」を希望することで以前と同じような比率に戻っているのは当然といえば当然です。

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一次判定のロジックにより要介護度が過小評価されているという反省のもとで判定基準を見直して,新たなシミュレーションを行ったところ,概ね以前の比率に近付いた,ということのようです。


今年度の要介護判定の流れ,という視点で上記のグラフを再構成してみました(2008年分の「要支援2」と「要介護1」は「要介護1相当」として併せて集計されています)。

一次判定で軽度化した要介護度が二次判定で改訂前と同じような比率に復活していることから,介護審査会での判断が介護度を以前並みに修正していることが伺えます。ただし要介護度の変更について以前より要件のハードルが上がっている以上,審査会側が本質から外れた議論を強いられていることが推察されるのですが。


また,経過措置によって以前よりむしろ要介護度が高めになっている部分がありますが,これは利用者に経過措置の適用を委ねたことによるのかも知れません。経過措置が終了した次回改定以後,混乱を生じることが危惧されます。


今回は,厚生労働省が自らの過ちを認めて修正したことについてはそれなりに評価してもよいのではないでしょうか。もちろん認めざるを得ないほど欠陥がひどいとも言えるし,あくまで「いつもの厚労省と比べれば」という但し書きは必要ですが。その一方,一次判定のロジックを改善すればそれでいい,という考え方はそのままです。バラツキを抑えるために判定基準を簡略化したわけですから,そこから外れるケースを拾うために人間が判断して修正する余地はもう少し認めるべきではないかと思います。