可能なら前倒しを


各紙で報道されていますが,コメント全文を掲載しているロハスメディカルより引用。


新型インフル「小児の予防接種スケジュール、可能なら前倒しを」 - ロハスメディカル

厚生労働省は6日、1歳から小学校3年生までの子どもと、基礎疾患を持つ小学校4年生から中学校3年生までの子どもへの新型インフルエンザ用ワクチンの接種時期を早め、可能なら今月中旬から接種することを検討するよう都道府県に通知したと発表した。5歳から14歳の子どもが新型インフルエンザに罹患すると重症化する傾向があると示し、同日始まった3回目のワクチン出荷に伴い600万回分の接種が可能になるとして早期の接種を求めた。(熊田梨恵)

接種を早めることができる根拠としては,

この本日の出荷により、これはもう多少復習になりますけども、3回目ですから、1回目が10月9日に118万回分、2回目が10月20日の134万回分、そして本日355万回分、というふうに順次生産されて出荷されております。これらを合わせると約600万回分ということになりまして、それならば、優先接種の順番は変えませんけど、前倒しが可能になるのではないか、ということでございます。

ということのようです。前倒しといってもあくまで現在接種している基礎疾患を有する成人との優先順位が変わるわけではなく,単純に現在のスケジュールを繰り上げるという意味のようです。ワクチンの供給数も当初予定のままです。


確かに現時点で流行している年齢層を考えれば,若年者の接種を急ぐという判断は理解できますが,実行可能かどうかとなると話は別です。足立政務官としては,10月末に優先接種分のワクチンが,今回発送した小児割当分が11月上旬にそれぞれまとめて医療機関に届くというイメージなのかも知れません。もしそういう運用をしている自治体であれば無理矢理スケジュールを繰り上げることも不可能ではないと思います。それでも相当きつそうですが…。


少なくとも当地域では優先接種分についてさえ11月中に予定数の2割程度供給されるだけで,はっきり言って現時点で予約の取りようもない状態です。小児分については供給予定数も未定です。ワクチン供給の運用を各自治体に委ねた以上こういうこともあるとは思いますが,そうした事情をどこまで把握した上で「可能であれば」と仰っているんだろうかと個人的には思います。いつものように現場の情報がどこかで阻害されているのかも知れません。


あと興味深い発言としては,

10月1日にインフルエンザ対策本部が開かれる前に、10ミリリットルバイアルを無駄なく使用するために、医療機関だけでなくて、保健所や保健センターで接種できるように各地域で連携を取りながら進めて行ってもらいたいという方針を決めて、都道府県の課長会議に10月2日に提出したところです。

10月2日の課長会議でこんな方針が出ているとは不勉強で知りませんでした。10mlバイアルによるロスを最小限にするだけでなく,医療機関の負担を軽減するために妥当な提案だと思いますが,実際のところどのくらい実行されているんでしょうか。当方の知る限りは都市部・地方に関わらず医療機関での個別接種を協力頂きたい…という地域ばかりですが。

基本的には新型インフルエンザに感染した方々については、ワクチン接種を受ける必要はないと判断しています。

確かに現在の定点観測によれば,ほぼ全例が新型インフルエンザということですからその通りです。ただし今後季節性のA型インフルエンザの流行が始まったら,市中医療機関で両者の区別はつかない以上「インフルエンザにかかった」と言われても新型インフルエンザワクチンの接種は必要ないとは言い難いところです。そのあたりは前もってメディア向けに釘を刺しておくのが賢明かと思います。

追記(2009-11-08 6:50)

記者会見の詳細な模様がロハスメディカルにあがっていました。
新型インフルワクチン接種の前倒し―足立政務官、約1時間の記者会見
都道府県によるスケジュールにかなり差があり,遅れているところもあれば前倒しを要望しているところもあるので,「可能であれば」前倒しを行うという主旨のようです。間に合わないところはどうするの?という質問に対してはやはり「現場の判断」とのことです。