刑事裁判と再発防止


福島県立大野病院「事件」裁判の経過を見聞きする中で当方が理解したのは,医療事故の責任を刑事訴訟によって追及することは「真実」を明らかにすることに必ずしも繋がらないし,まして再発防止のために有用とはいえない,ということでした。


福島・大野病院医療事故:「裁判での解明不十分」 弁護団、再発防止へ報告書 - 毎日新聞 cache

有罪か無罪かの判断を目的とする刑事裁判では、再発防止の教訓をくみとることに限界があると結論付けた。

この結論を導き出すために時間をかけて独自の検証を行ったとのことですが,これは医療事故だからというよりは,裁判というしくみがもともとそうだからという以上の話ではないように思えます。当方のように法律に関しては専門外であればともかく,専門家の方にとってははじめから結論は自明ではなかったかと思うのですが,自明の結論であってもそれなりの「検証」という手続きを踏まなければならないような,当方には窺い知れない事情もおありになるのかも知れません。


裁判という手続きによる再発防止は限界があるとして,ではどうするかということで医療事故調に繋がるはずですが,政権交代したあとの先行きはまだ見えてきません。医療事故を調査するマンパワーと財源が圧倒的に不足しているなかでどうやってシステムを立ち上げるのかという議論は,「目に見える成果」が求められる刷新会議が猛威をふるう現状ではなかなか大変そうです。そういえば「モデル事業」も見直し対象に上がった模様ですが,完全にハシゴを外された先生方のご心境はいかばかりかと…。