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ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

アメリカでの教育・年金・医療・雇用といったセーフティネットとしての社会保障がまともに機能していない現状をオバマ政権誕生の前後を通して描いた一冊。個人的には教育ローンとか民間医療保険のあくどさは聞いていましたが,刑務所ビジネスの実態は完全に想像の埒外で,ちょっと絶句しました。

民間企業による競争で質と量の向上というものが達成されたとしてもそれは社会に還元されるとは限らないわけで,なんでも民営化すればいいわけではないんだろう…と考えるのは当方がアメリカ国民ではないからでしょうか。たとえばオバマ政権に交代後そうそうに単一支払皆保険制度案が葬り去られ,いつのまにか皆保険とは似ても似つかない制度が議論されている過程を見ていて不思議で仕方なかったのですが,その一因として情報が歪められてしまうというのはやはり大きいのでしょう。歪められたといっても冷静に考えればネガティブキャンペーンの内容はツッコミどころ満載なのですが,そこを冷静に判断できないように国民性も利用しながらうまく不安を煽る手法が鍵なんだろうな…というのが感想です。