「真実」の究明8


大淀病院事件の地裁判決は原告の請求棄却とのことでした。なぜ原告の主張が退けられたという肝心な情報が報道記事から読み取れないのですが,こちらの記事で判決要旨のメモを公開されていて,医師側の過失および診療行為と死亡の因果関係はともに完全に否定された上での判決だったことが分かります。

司法手続きによって(あくまで現時点ではありますが)「真実」が認定されたことで,せめて原告側が「避けられなかった不幸」であったことを受容する助けになればと願います。


報道では本文より付言に記事を割いているようですが,所詮は「裁判官の独り言」という話もあってあまり考察しても仕方ないのかもしれません。ただ非常に些細なところにツッコミを入れておくなら,

しかし、救急患者は増加しているのに、提供側である病院側は、病院の閉鎖、勤務医不足などできわめて不十分な供給になっている。救急医療の訴訟リスクが高いことや医療収益の問題で、病院側にメリットがない。救急医療は崩壊の危機にある。

大淀町裁判に行ってきました(その2)(大淀事件35-2) - お決まりの日々?

裁判官が付言とはいえ判決文で「訴訟リスクが病院にデメリットをもたらしている」と言及しているわけで,ちょっと驚きました。従来は判決にあたり「弱者」である患者側に配慮しているという話もありましたが,現状を踏まえて認識が変わったんでしょうか。それとも訴訟権の濫用について仰っているんでしょうか。医療収益はともかく訴訟リスクについては国や自治体が解決する筋ではないし,いずれにしても,誰に向かって問題提起しているのかはっきりしない法曹らしかぬ文章ではあります。