診療報酬請求査定の基準


レセプト審査、査定の判断に「支部間差異」―支払基金の報告書 - CBニュース

社会保険診療報酬支払基金が3月15日に公表した報告書によると、医療機関が提出したレセプトを各都道府県支部の審査委員会が審査する際、同じ事例を審査しても、保険診療のルールに適合していない「査定」とするかどうかの判断が異なる「支部間差異」があった。同じレセプトを複数の支部が審査した際の査定件数などを調査した結果、査定と判断したレセプトの数に最大で約7.5倍の差が生じていた。

支払基金が加入者から集めた財源は有限なので医療機関からの過剰な請求は抑えたいところでしょうけど,厳しくしすぎると必要な診療まで査定することになります。医療機関としては,適正な診療だと考えても検査や治療に要したコストが回収できないのなら,診療行為そのものを避けるのが合理的な判断となります。厳しい査定を受けている地域ほど,必要な保険診療まで制限され,患者さんが不利益を被っている可能性が高いということです。

支払側の挙げる対策としては,

  • 全国の審査委員会が情報共有して協議を行う体制を確立する
  • 支部間差異の実態調査を進める
  • 審査事務の低調な支部に対して本部が支援・指導する

とのことですから,どうやら支部間で差があるのは査定率の低いところに問題があり,査定率の高いところにあわせて統一するべきであるという認識のようです。

当方の認識としては,支払基金による査定にかんして一番問題なのは,ルールが不明朗なことだと考えています。どうやら地域ごとに独自のルールがあるらしいのですが,それは外部に対して明文化されているわけでなく,医療機関さえもそんなルールがあることは査定されるまで分かりません。必要な診療であればその旨コメントを添付したり,査定されたあとに異議申し立てはできる建前にはなっていますが,却下された場合に具体的な理由は明らかにされません。

支払基金にとって加入者は財源を負担するかわりに,それに見合った適切な保険診療を受ける顧客です。もし査定率を上げるために基準を厳しくするのであれば,支払基金側はそのルールを明示して説明する義務があるんじゃないでしょうか。厳しくしたうえでそのルールに医学的根拠がなく,恣意的で不適切なものであれば異議を申し立てることもできるわけですから。

賛否両論あろうかと思いますが,少なくとも,レセプトなみの明細書の発行を義務化すれば患者さんにとってメリットがあると主張した支払基金と中医協公益委員におかれましては,患者さん側に査定の妥当性を判断するだけの知識と判断力を求めることに異議はないですよね。