後期高齢者医療制度を廃止したあとは


後期高齢者医療制度というのは医療リスクの高い集団を別勘定にしたうえで診療報酬を包括払いにして総額を抑制するという意図だったと理解していますが,結局は政治的に受け入れられず廃止となりました。もしそうならなくても医療費抑制が目算通りに運ばずに制度は破綻した可能性が高かっただろうとは思いますが,いずれにしても廃止になった以上コストの負担をどうやって分配するか決めないといけないわけです。

保険制度の主旨を考えたら健保と国保のあいだで財政負担にあまり差があるのは好ましくありませんから,であれば制度そのものを統合するか,それが困難であるなら,制度間で財政調整を行う必要はあるかと思います。また,制度内でも収入による負担の逆進性は小さくなるような工夫をするべきでしょう。そこまでやってもおそらく必要な保険給付をまかなうには不充分でしょうから,そこで消費税を財源とした公費の投入を検討する,という議論であれば理解できます。

協会けんぽの負担を健保組合に肩代わりさせる法案が可決されたのもその点では多少なりとも意味のあることなんでしょうけど,保険制度全体でいえば,あくまで報道を見る限りですが,高齢者医療はあくまで国保の枠でまかない,退職者のうちどこまでを健保の対象とするかというレベルの議論にとどまっているようで,逆進性の解消という面ではかなり不充分だと思います。

あとは,消費税増税したとして,どのくらい医療財源に回ってくるかというあたりでしょうか。仮に増税分が全額社会保障費として使えるとしても,民主党が公約通り年金を租税方式に変更すればそちらにほとんど消えてしまう可能性が高いでしょう。消費税が増えても医療給付が増えなければ,収入の少ない患者さんへの負担が相対的に高くなり,逆進性はさらに強まることになります。

そういうことを考えていると,医療制度を何とかするためには消費税を増税するのは避けられないだろうとは思いながら,じっさいにそういう議論が聞かれるようになってきてもいまひとつ不安が残るんですよね。何となくですが,あまりよくない方向に進んでいるような予感がします。