「救児の人々」を読みました


救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)

救児の人々 ~ 医療にどこまで求めますか (ロハスメディカル叢書 1)

ロハスメディカルで先行公開されているのを読んでみました。個人的にはNICUに関しては専門外だとなかなか実情を知らないこともあったりして,かなり勉強になりました。筆者は墨東病院産科受け入れ不能の件をきっかけにNICUの取材を始められたとのことですが,通り一遍の事実だけでなく,取材の過程で信頼関係を築いて周囲に打ち明けることができない当事者の葛藤(という言葉で簡単に言い表せないような黒い感情も含めて)を引き出し,それが当事者だけの問題ではなく,社会の問題でもあることがきちんと提示されています。医療の進歩に対して社会がそれを受け入れる体勢にないミスマッチがあるのではないか,という疑問は日常診療でも常々感じていたことですが,それが実際にどれだけ深刻な事態をもたらしているのか,そしてそのために社会はどれだけの負担を負うべきで,誰がそれを決めるのか,専門書でなく一般書で世に問い,物議を醸すことには大きな意味があると思います。