やさしさと冷静さと


ホメオパシーに関する報道に関する議論のなかで当方の思いつく程度のことは既に出尽くした感もありますが,せっかくなのでここ数日のあいだに呟いたことがタイムラインの彼方に消え去る前にまとめてみました。読むべきところはあまりないかと思いますが,あくまで日記ということでご了承ください。

現時点で標準的な医療の基礎となっている考え方は,どうやっても生じてしまう偏りや思い込みによる影響を,客観的な実証によって取り除くことにあると理解しています。それによって診断や治療の有効性が保証され,患者さんにとって有益なものになる,ということになります。

そのような手法によって冷静に事実を観察する部分と,患者さんの心情に共感しようとする部分は,相反することなくひとりの医療者の内部で共存している,と個人的には思います。両者のバランスはその医療者の立場や状況で異なるにしても,どちらかを完全に捨て去ることはないでしょう。言いかえると,客観的に判断を下すことが,患者さんへの共感を否定することを意味するわけではありません。

もし患者さんの心情に寄り添う「やさしさ」「癒し」を強調するあまり,自らが行っている医療行為への客観的な評価を怠ってしまっては,もしそれが善意から始まったものであったとしても,患者さんにとって有益なことを行う,という理念が欠けているということになるのではないかと考えます。その意味で常々問題にされる「患者さんの心情を無視した治療」と同様に批判の対象となるべきです。

医療者としては,ホメオパシーに限らず他の代替療法,さらには現時点で標準的とされる治療についても,それがどの程度妥当なものであるのかという客観的な視点をつねに持ち続けることが必要なのでしょう。