在宅診療と診療報酬改定2

中医協が診療報酬の答申を行ったということでメディアでも取り上げられていましたが,見出しにはやはり「在宅医療推進」が目立ちました。メディアが「○○を手厚く評価する」と書くときには「(※ただし△△に限る)」という部分を省略していることが多く,今回もその例に漏れません。

資料によると在宅医療において従来より「手厚く評価」されるためには「機能を強化した在支診・在支病の施設基準」を満たす必要があるのですが,具体的には

ということになっています。単独にしろ連携にしろ3人以上の医師がいるという点は,継続的して24時間対応をするうえではそれなりに妥当な水準なのかもしれません。それと比べると過去1年間で緊急往診5件・看取り2件というのは「機能を強化した」と呼ぶにはかなり微妙な気がします(あくまで個人的には)…。このへんのちぐはぐさが,ちゃんと分かってるんだろうかという不安を招く要素でもあるのですが。

ただ,すでに条件を満たしているところ(それほど多くないと思います)はともかく,改定後にどの程度がそのハードルを越えて参入して,どれくらい在宅のニーズを満たすのかというあたりはよく分かりません。在支診にもそれぞれの体制なりがあるわけで,医師の数を増やすことはもちろん,連携しろと言われてもそう簡単にはいかないようにも思います。こういう医療政策上のインセンティブでありがちなハシゴをかけて外すというパターンだと,無理して体制を変えたところは大変な目に遭うし,それだけに参入に躊躇することも大いに考えられます。

在宅医療は単位時間に診察できる人数に制約がありますし,医療介入の必要度にもかなり幅がありますから,少数の「機能を強化した」在支診に力を入れるだけでなく,もっと平均的な診療所が多く参入できるようにしたほうがいいのではないかと個人的には思っています。たとえば,前回の改定で集合住宅に入居する高齢者を訪問診療したときに世帯が別でも同じ日だと1/4以下(840→200点)に減らされる,みたいなハシゴ外しがありましたが,こういうところはあまり改善されていないようで残念です(なお地域密着型特定施設と特別養護老人ホームについては400点が認められました)。

「メリハリのきいた」というと聞こえはいいですが,メリハリをきかせることそのものが目的ではなく,あくまでその方針によってどのくらい状況が改善されたのかといったあたりが大事ではないかと思います。在宅医療がニーズに応じて提供されていないとして,その原因が本当にメリハリがきいていなかったことにあるのか,当方にはどうも疑問に思えます。