読書感想「実践・倫理学」

コロナ禍のさなか、感染対策のために個人の権利にどこまで介入してよいのかという問題が生じることをしばしば見かけていたのですが、そんな折にYoutubeで「パンデミック倫理学」と題した動画を見る機会がありました(現在も視聴できます→https://www.youtube.com/watch?v=UL14YlKEglc&list=PLRdmV4a9IuG0_wHpSERbCDbb87aOUuKAx)。

興味深い内容だったので、同じ先生がちょうど最近出された入門書を読んでみました。

本書では死刑制度や安楽死、喫煙、ベジタリアニズムなどの倫理的問題が取り上げられていますが、それぞれの議論を深めるというよりは、それらの題材を通して倫理的な考え方を身につけることを目標としているようです。ややもするとこうしたテーマに「正解はない」という結論に飛びつきたくなりますが、いろいろな考え方がある中で、そのひとつひとつを一貫性のある基準に基づいて吟味していくのは、確かに一種の訓練が必要なのでしょう。逆にいえば、そうした訓練をしないまま現実の倫理的葛藤に直面してしまうと、極論に流されてしまう危険性があるといえるのかもしれません。その意味では古くて新しいテーマなのでしょうし、個人的にはとてもタイムリーな一冊でした。