「真実」の究明


始めにお断りしますが司法は完全に素人なので当方の勘違いや誤解があればぜひ教えていただきたいと思います。

真実を究明する場が法廷しかない,というのが医療訴訟の理由として挙げられることがありますが,裁判という場においては真実かどうかとは別に裁判官を納得させた側が勝つわけですから,医療事故の真実を究明するための機関としては適切ではないと個人的には思います。医療訴訟が増加した結果として現実には萎縮医療や防衛医療が促進されており,それは患者の方々,ひいては国民の利益にはなりません。医療事故の原因解明,再発予防を行う第三者機関を作ることは医療側にとっても患者側にとっても望ましいことである筈です。

 素案によると、医師と法律家が調査結果を評価した上で、報告書を医療機関と患者の遺族の双方に提供。医師に過失があると認められた場合は、厚労省が医師の業務停止などの行政処分を速やかに行う。該当する死亡事例については、医療機関に届け出を義務づける方針で、届け出を怠った場合の罰則も検討する。

医療事故死 届け出義務化 2007年3月8日 読売新聞


届出を義務付けるのであれば,第三者機関の調査結果は刑事事件の捜査に用いられてはならない,という前提が必要だと思われます。一応,

 現在、死因究明を目的とした届け出制度は設けられていない。医師法21条に基づき、医療事故による死亡事例が「異状死」として警察に届けられるケースは多いが、捜査を目的としているため、迅速な死因究明や再発防止には必ずしも結びついていないのが実情だ。

 これに対し、新制度導入後は、届け出の義務化を前提に調査組織が一元的に原因究明を担当し、暴行や毒物使用の形跡があったり、交通事故が疑われたりする場合について警察に届け出るという役割分担案が、同省内で検討されている。

ということらしいので,配慮はされているようです。刑事はいいとしても,民事にはどういう影響が出るんでしょうか。「真実」が究明された結果として訴訟が減るのであればそれに越したことはないのですが。

以下は記事本文。

医療事故死 届け出義務化 究明組織 素案まとまる

 医療版の事故調査委員会の新設を検討している厚生労働省は、医療事故による死亡事例の届け出の義務化などを盛り込んだ素案をまとめた。

 医療事故死に関し、新組織が一元的に原因究明にあたることを念頭に置いたもので、この素案をたたき台に、来月設置される検討会が本格的な議論をスタートさせ、2010年度の新制度開始を目指す。

 新しい制度は、診療行為中に患者が予期しない形で死亡した事例について、調査組織が解剖や診療録(カルテ)の精査などにより原因を調べる仕組み。

 素案によると、医師と法律家が調査結果を評価した上で、報告書を医療機関と患者の遺族の双方に提供。医師に過失があると認められた場合は、厚労省が医師の業務停止などの行政処分を速やかに行う。該当する死亡事例については、医療機関に届け出を義務づける方針で、届け出を怠った場合の罰則も検討する。

 現在、死因究明を目的とした届け出制度は設けられていない。医師法21条に基づき、医療事故による死亡事例が「異状死」として警察に届けられるケースは多いが、捜査を目的としているため、迅速な死因究明や再発防止には必ずしも結びついていないのが実情だ。

 これに対し、新制度導入後は、届け出の義務化を前提に調査組織が一元的に原因究明を担当し、暴行や毒物使用の形跡があったり、交通事故が疑われたりする場合について警察に届け出るという役割分担案が、同省内で検討されている。

 また、調査組織には高度な中立性が求められることから、公益法人としたり学会に置いたりするのではなく、厚労省都道府県に設置するか、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会のような委員会組織にする案を軸に検討を進める。