私見

「反ワクチン記事」とメディアに関する私見

新型コロナウイルスの流行もまだ収束が見えない状況ですが、海外では日本よりはるかに大きな感染者数が出ていることもあり、異例の早さでワクチンを開発、そして実際の接種が始まっています。有望なワクチンについては、日本でも認可され、接種スケジュール…

日常と非日常

新型コロナウイルスに関して専門的なことを書くような力量はありませんが,このあたりであくまで個人的な記録を残しておくことにします。 中国で新型の肺炎が発生したという記事が載っていたのが昨年の大晦日でした。限られた地域で終わるのかな…と思ってい…

人生という名の会議

小籔さん起用の「人生会議」ポスター、批判受け発送中止:朝日新聞デジタル 人生の最終段階でどんな治療やケアを受けたいかを繰り返し家族や医師らと話し合っておく取り組みの普及啓発のために厚生労働省が作ったポスターに批判が多く寄せられている。厚労省…

胃瘻造設数が減った理由は?

「終末期」のため口から食事が取れなくなった状況での人工栄養という選択肢について,朝日新聞で取り上げられていました(有料記事ですが登録すれば1日1記事のみ無料で閲覧できます)。 「(胃瘻を作るのに)おなかに穴を開けるのが嫌だ」と仰っていた方が結…

混合診療解禁を巡る議論2

このところ「混合診療」の話題がメディアで取り上げられるようになりました。先日は安倍首相自ら保険外診療と保険診療が併用可能な制度を新設するように指示を出しています*1。 「保険診療と保険外診療を同時に受けた場合にも保険診療分の診療報酬が支払われ…

かかりつけ医と在宅医療

前回からだいぶ間隔があいてしまいました。在宅関連の診療報酬改定について,とりあえず新年度を控えた現時点での雑感を書き残しておきます。同一建物への訪問診療が大幅に引き下げられたことでこれまでの在宅主治医が撤収してしまい,有料老人ホームやサー…

「医療否定」は患者にとって幸せか

「医療否定」は患者にとって幸せか(祥伝社新書)作者: 村田幸生出版社/メーカー: 祥伝社発売日: 2012/12/03メディア: 新書この商品を含むブログ (1件) を見る以前当ブログでも紹介(■スーパードクターの弊害)した『「スーパー名医」が医療を壊す』は目の付け所…

二年目の春

以下は個人情報につき事実の一部を脚色しています。昨年の初め頃,震災と津波により長年住んでいた家を失った高齢の女性が当院を受診されました。もともと独り暮らしでしたが,当地に嫁いだ娘さんが仮設住宅での生活を心配されて転居することになり,これま…

尊厳死と医療費

直接見ていないのですが,昨夜報道番組で石原伸晃氏が尊厳死について発言していたようです。 この文脈で何がどう「誤解」なのか? - lessorの日記 以前にも胃瘻による経腸栄養を「エイリアン」と表現したことを併せると,どうも延命治療に対してかなり否定的…

意志決定における専門家の責任

某所での議論を見て思ったことですが…。意志決定は,対象が何かの専門領域に関することであっても最終的に当事者が行うというのは確かにその通りです。専門家の立場としては,当事者がメリット・デメリットについて検討して出した結論であれば,それが一般的…

家族の道義的責任と社会サービス

経済的余裕があるのに親族が生活保護を受給されていた,と糾弾されるタレントがこの週末話題になっていました。報道を見る限り,当該するケースがそもそも何かのルールに違反しているかは明らかではなく,どうも扶養する能力があるのにそれを果たさなかった…

胃瘻造設と意思決定2

少し前の話になりますが,野党幹事長が胃瘻からの経腸栄養をおこなっている光景を「エイリアン」と表現したことが報道されました。いつもの如くマスメディアの編集を経た発言をそのまま受け取るわけにはいきませんが,好意的に解釈すれば,そうした実状をよ…

尊厳死の法制化

尊厳死法制化で議連が骨子まとめる - 日経メディカル 骨子では、終末期や延命措置について定義。終末期を「全ての適切な治療を受けた場合であっても患者に回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態」とした。延命措置は「傷病の治癒では…

在宅診療と診療報酬改定

来年は医療と介護の診療報酬同時改定ということで現在議論が行われているところです。財源に関してはプラス改定という意見が早々に下火となり,争点はすでにプラスマイナスゼロかマイナスか,というあたりになっているようです。まあ震災復興で金がないから…

混合診療解禁を巡る議論

混合診療禁止の法的根拠について争われていた裁判は,最終的に最高裁で「法的根拠あり」の判断が下されたようです。 健康保険法に混合診療を禁じる規定はないが、国は法解釈で禁止してきた。その一方で、1984年の同法改正以降、特定の高度先進医療に限っ…

震災と社会保障改革

民主党内で社会保障改革について昨年来議論が続いています。結局のところは必要な財源をどのように調達するのかが争点になるのでしょうけど,ただでさえ議論の着地点を探すのが難しいのに,震災による経済的損失を無視するわけにはいきませんから,ますます…

いま自分がなすべきことを考える

3月11日の地震およびそれ以降のさまざまな災害に関して,自分が何を語るべきなのかいまだ分からない所もありますが,やはり個人として考えるところを書き残しておきます。このエントリに関しては,誰かにこうしろという意図はありません。あくまで自分自身の…

内部調査が残した傷跡

東京女子医大での心臓手術における医療事故に関連して,内部調査を巡って争われていた民事訴訟が和解で決着したとの記事です。 東京女子医科大学病院(東京都新宿区)で2001年、心臓手術を受けた小6女児が死亡した医療事故をめぐり、機器の操作ミスが原…

やさしさと冷静さと

ホメオパシーに関する報道に関する議論のなかで当方の思いつく程度のことは既に出尽くした感もありますが,せっかくなのでここ数日のあいだに呟いたことがタイムラインの彼方に消え去る前にまとめてみました。読むべきところはあまりないかと思いますが,あ…

後期高齢者医療制度を廃止したあとは2

猛暑のため脳の活動が低下気味で140字以上の文章を書くのが困難となり,しばらくこちらを更新できませんでした。なんとか涼しい時間帯を見つけてせめて週に一回くらいはエントリを書きたいと思っています。 さて,後期高齢者医療制度廃止という公約に沿って…

胃瘻造設と意思決定

昨夜のETV特集で胃瘻による経腸栄養の問題が取り上げられていました。 食べなくても生きられる 〜胃ろうの功と罪〜 男女を合わせた平均寿命が80歳を越え、日本は世界最高の長寿国になった。その理由の1つが、欧米とは異なり積極的な延命治療が行われている…

意義ある議論のための手法

ひとはそれぞれ立つ場所によって同じ対象であっても見えかたは異なるわけで,そのまま議論しようとしても話がかみ合わないというのは当然のことです。無理矢理結論を出そうとすればどちらかが勝つまで泥沼の戦いが続くことになり,お互いに不毛なことです。…

不正な医療への取り締まりとインセンティブ

医療制度を悪用して不当な利益をあげる事例がしばしば取り上げられます。医療に期待される社会的機能を思えば,患者さんや低所得層の方をターゲットにするということに対して怒りを覚えるのも当然でしょう。ではどうすればそうした行為が根絶できるのかとい…

訃報

先ほどTwitter経由で知ったのですが,佐藤章先生が本日ご逝去されたとのことです。福島県立大野病院「事件」で先頭になって無罪を訴え,判決後も妊産婦死亡した方のご家族を支える募金活動を行われていました。当方は直接存じ上げないのですが,医療と司法の…

規制緩和と社会保障

昼休みにふと思いついたことですが…国際的に比較すると,日本の経済に対する政府の財政規模は小さい,ということらしいです。一方で政府による規制が厳しい国であることもしばしば指摘されます。これらを前提にして乱暴にまとめると日本の場合「口は出すけど…

国民負担についての争点

民主党は鳩山氏が降板し新たな党首を立てて参院選挙に臨むことになりました。次期党首と目される菅財務大臣は消費税増税を主張していましたから,持論が変わらければ*1マニフェストもそうなるのでしょう。方針としては「高負担高福祉」に舵を切ることになり…

失って分かったこと

大病を患ったときに,これまで長い間関心を持たなかった健康であることの大切さに気づくいい機会だ,なんて言われることがあります。もちろん健康の大切さを理解するために病気になるわけではなく,失ってしまったものを受け入れるためのひとつの考え方だし…

政争の具

緊急事態だから責任追及している場合ではないというのは分かるし,本筋とは離れた方向へ議論をミスリーディングすることで政治的に有利になることを意図しているのであれば,災害を政争の具にしていると言われても仕方ないでしょう。とはいえ,今やるべきこ…

改めて臨床研修制度を考えてみる

2004年から始まった臨床研修制度に対する評価は,いまだに定まっていないように思えます。予想された効果あるいは欠点がじっさいにどうなったのかは,こうだろうという理屈とはまた別に,できるだけ実証的に評価するべきなんでしょう。もちろん評価しようと…

議論の前提

一方にとっては当然の前提条件であっても相手にとってはそうでない状況で議論を続けていても,双方にとって得るものはあまりなさそうです。事実かどうかについては白黒つける余地もあるでしょうけど,その事実をもとにした価値判断について決定的な相違があ…