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原因追及と責任追及

診療 私見


6/23のコメント欄で教えていただいた「日乗連AA委員会 航空安全シンポジウム in TOKYO」(PDF)を拝見しました。大変興味深い内容でした。あおむしさんありがとうございます。航空・鉄道業務における事故と司法の関わりについてのシンポジウムなのですが,驚くほど医療分野と共通した問題を抱えているという印象を受けました。ご指摘いただいた点の他に,個人的に注目したいのは検事出身の弁護士からの刑事司法に関する発言です。

「日本の刑事司法制度での責任追及に固有の問題がある。」というべきはないかと思います。<再発防止のために原因を究明すること>と<責任追及のために原因を追求すること>は相当大きな違いが出てくる。
一つは実態的真実の追究というところに責任追及の前提としての事実の解明が行われる。それは結局のところ、‘正義の実現’というような、何か非常に大きな目標のために行われていて、身近なところの<事故の原因を究明して再発を防止すること>とは少し次元が違う問題になってしまっていること。
二つ目に、責任追及の対象が個人に限られている。本当の事故原因は個人だけではなくて色々なファクターが混じりあっているはずです。積み重なっているはずです。そういったものを全体的に解明するのではなくて、あくまで刑事司法の目的は個人の責任追及。それに関する部分だけが原因究明の対象にされるということです。

調査報告書が刑事事件の証拠として活用されているのが現状ですが、果たしてそれが適切なのかという問題もあります。そのこと自体が、事故の調査に対して協力する形で協力した人の供述が、処罰に用いられる。これは憲法の保証する黙秘権の侵害との関係で問題ではないか。
結局のところ、そういうものに頼らざるを得ない。事故の責任追及のための捜査の中で自己完結的に原因究明がで
きないことは、刑事司法の領域の検証に関わっている人達が、そういった面において専門性を持っているのかどうか。持っていないということです。
では果たしてそういう専門性がないところで、本来的確な、本当に真実の原因を前提にして行われるべき責任追及が適切なことができるのかという問題があります。

当方の解釈が間違っていたらぜひご指摘いただきたいと思いますが,事故再発予防を目的と考えるなら,刑事捜査はそもそも目的が違うものだし,現在の捜査手法ではむしろそれを妨げるということのようです。これが検察を代表する見解なのかは分かりませんが,こういう意見をお持ちの司法関係者もいるということです。


なお,同日のエントリで

むしろ「重大な過失を除いて,医療事故に対して業務上過失致死を適応するのは相応しくない」という判例を上級裁判所で出していただければ,その後は医療事故が起こったときも検察官の判断で不起訴となる可能性が高いのではないかと思うのですがどうでしょうか。

と思いつきで述べたのですが,不起訴の場合は捜査によって収集された証拠は全て閲覧不可能となり,事故調査に利用することができなくなってしまうとのことなので,当事者が法的責任を問われる可能性は低くなるものの原因究明と再発予防のためには百害あって一利なしのようです。