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第三者機関の理想と現実


医療事故が発生したときに,きちんとその原因を究明せずにあいまいにしておくことにより,患者側の不信が生じ,再発予防にも生かされないということは以前から指摘されて来ました。そういう反省を踏まえて医療事故を調査する第三者機関のあり方について議論がされていると,個人的には理解しています。


どのようにして事例を拾い上げるか,あるいは調査した結果をどのように活用するのか,そのために届出の基準や手続き,調査結果の取り扱いをどのようにすべきかという議論は,いわば調査機関のインプットとアウトプットに関するものです。機関の中枢は医療事故を起こした原因や背景の調査を行うことで,ここがまともに機能することは暗黙の前提となっていると思われます。


とはいえ,現実問題として,原因究明を行うための戦力は残念ながら圧倒的に不足しているといわざるを得ません。どのような案が採用されるにしても,名誉職や非専門家がいくら集まっても仕方ありませんから*1,調査機関にはおそらく事案と利害関係のない専門家が招集されることになるのでしょう。とはいえ調査機関を立ち上げれば専門家が湧いて出てくるわけではありません。現時点でも医療の各分野で専門家は不足していて,過重労働でなんとか必要な医療を供給しようと努力している状態ですから,そうした貴重な戦力を拘束することには限界があります。


長期的には,調査機関に専門家が専従可能な体制とするために医師養成を含めた医療政策の変更が必要となるのでしょう。ただ,それが実現するまでのあいだ,「真実を明らかにするためには裁判に訴えるしかなかった」などといわれる状況を放置するわけにはいきません*2から,さしあたり不充分ではあっても現有戦力で可能な範囲で調査機関を動かしていかざるを得ないとは思います。


先日民主党議員による私案が公開されましたが,その案によれば,診療に関わる死亡について,遺族が納得すれば院内で調査は終了,納得できなければ第三者機関に届け出て調査を行う,とのことです。もちろん調査機関に送られる事例を絞り込むのが患者側の意向次第というのが適切かどうか*3という点で議論の余地はあるでしょう。肝心の調査機関に関してはまだ詳細不明なので評価は現時点では保留しますが,少なくとも「死亡例は全部調査の対象とする」などという案よりはまだ実現可能性に配慮しているような気がします。


 

*1:結局はそういう機関になってしまうのではないか,という危惧も当然あるとは思います。

*2:あくまで,医療崩壊を回避したいという立場であればですが。

*3:故意による事故が結果として隠蔽されてしまう可能性はあります。