パンデミック宣言


WHOが新型インフルエンザ(H1N1)の警戒水準をフェーズ6に引き上げたということで今朝の各メディアで大きく取り上げられていました。WHOの声明を読むと,パンデミック初期の現段階で感染力は中程度であり大多数は良好な自然経過を辿ること,若年者で重症化する傾向がある点で季節性インフルエンザと明らかに異なること,重症の中に基礎疾患をもたない例が少なからずいること,妊婦は間違いなく高リスクであることが述べられていて,主に先進国における流行によって得られた知見が整理されている感じです。これによって新たなパニックや混乱が生じることも考えにくいように思います。

Although the pandemic appears to have moderate severity in comparatively well-off countries, it is prudent to anticipate a bleaker picture as the virus spreads to areas with limited resources, poor health care, and a high prevalence of underlying medical problems.

また,先進国においては中程度の重症度であっても,医療水準が低い地域ではより事態は深刻になることも懸念しています。もっとも先進国のなかでも経済格差によって重症化する割合が変わってくる可能性は大いにあるんでしょうけど。

Countries with widespread transmission should focus on the appropriate management of patients. The testing and investigation of patients should be limited, as such measures are resource intensive and can very quickly strain capacities.

患者の検査と追跡は集約するべき,とのことですが,確かに蔓延した状況で全例把握することの意味は考え直した方がいいかもしれません。そうなると全患者のウイルス検査なんていう報道*1にはちょっと首を傾げてしまいます。限られた医療資源を考えれば,定点観測でいいのではないでしょうか。


もっとも日本での対策は強毒型を想定したもので今回の流行には結果として過剰な対応をせざるを得なかったという面もあったようです。そのあたりは今後の課題でしょう。現在,ウイルスの毒性によって3段階の対応ができるような検討*2もされているようなので同じような混乱を繰り返さないことを期待したいところですが,毒性によって対策を変更する「意志決定」が現状を適切に反映していないと結局は現場が責任をかぶって「柔軟」な対応を強いられることになるんじゃないかという不安がなくもありません。