選挙と医療政策
公的な医療サービスにどれだけ税金を使い,どのような医療を提供するのかは負担する住民の意思に基づくべきですから,選挙の公約に医療政策を掲げて争点とするのは望ましいことではあるのですが,結果としてこのようなことにもなる,ということでもあります。
東御市長に花岡氏が初当選…現職の土屋氏を破る - 信濃毎日新聞 cache
花岡氏は態勢づくりが遅れ、立候補表明が3月初めにずれ込んだものの、有権者一人一人に訴える草の根型の手法を展開。市民病院の産科新設を柱に、医療費無料化の中学3年までの段階的拡大、市長退職金ゼロなどを主張、土屋氏との政策の違いを打ち出し、短期決戦で若い世代や女性層などに浸透した。
土屋氏は昨年12月の市議会定例会で立候補表明。全市的な後援会組織や業界団体の支援を受けて先行した。実績を強調、図書館新設などへの継続的な取り組みを訴えたが、政策に新味が欠けたこともあり、運動が上滑りした。
確かに地域に産科がないのは不都合かも知れませんが,地域の医療情勢を考えると市民病院に産科を新設したうえで必要な産科医を招聘し,持続的に診療を提供するのは困難といわざるを得ません。なにしろ隣接する人口が5倍の上田市ですら産科医療が困難な状況なのですから。現実的には他地域との連携という方向に向かわざるを得ないでしょう。
「医療費無料化の中学3年までの段階的拡大」も選挙受けはいいですが,少子化対策としては決して上策ではありませんし,なにより今度は小児科医療まで崩壊するのではないかと心配になります。
この件については内部事情に詳しい訳ではありませんし,当選した側が公約の非現実性を自覚しているのか,それとも本気でそうするつもりなのかは分かりません。この選挙の争点が医療だけだったわけでもないんでしょうけど(他に大きな争点もなさそうですが),この選挙結果を見れば政治家としては,まっとうな現実的より非現実的な理想論を掲げて戦う動機にはなると思います。
選択の前提となる情報が適切に提供されない限り,今後このような争点で首長なり議員が選ばれて,結局「無理なものは無理」ということが住民レベルの理解に至るまでしばらく時間が掛かるのかも知れません。