患者と病院のあいだ


こちらが零細開業医ということで油断するのか,診察室で地元基幹病院の不平不満を愚痴る方が結構います。だいたいは待ち時間が長い,話を聞いてくれないといった内容が多く,余裕がない状態でのコミュニケーションの難しさを実感します。たぶん自分が病院勤務していたときにもこんな感じで地元の開業医で悪口を言われていたんだろうなあ,とも思います。

問題なのは「病院でこんな説明を受けたんだけど本当でしょうか」あるいは「病院でこういう治療を受けているけど良くならない」の類です。一方的な言い分をもとに無責任なことは言うわけにはいかないので,「それは担当の先生とよく相談してください」が模範解答なんでしょう。ただ,病院に対して不信を抱いている状況で「病院に行け」と答えるだけでは,当方を含めた医療そのものに対する不信感を増幅させてしまい,その結果,患者さんが向かう先は病院ではなく,民間療法だったり,もしかすると弁護士だったりするかも知れません。

そう考えると,その患者さんとの関係を保つように努めつつ,診断・治療に不確実性が伴うこと,医療現場が限界に近いことをなんとか伝えることも必要なのではないかとこのところ考えています。例えば,病院で待ち時間が長いこと,外来で話をする時間が取れないことをとってもそれなりの理由があるわけです。患者さんの求める診断・治療と現実が乖離することがあるのも同様です。もちろん,あまり具体的に踏み込んで「後知恵バイアス」に荷担することは避けなければなりません。

本来であればこういうのはメディエーターに期待される役割であって,病院内できちんと機能すれば一番良いわけですが,あまりにも余裕がなさ過ぎるが実情でしょうし,そこに診療報酬の上では一円にもならないことを求めるのも酷です。少なくとも患者さんが相談を持ち込むというのは当方にそういう役割を少なからず期待してのことではないかと考えれば,当方に出来ることはしたい,とは思います。ある意味,当方のような繁盛していない診療所だからこそ対応する暇があるとも言えますが…。