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医師にも大事な「カネ」の話

読書 私見


この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)

この世でいちばん大事な「カネ」の話 (よりみちパン!セ)


今週読んだ本の中の一冊。お金による苦労を味わった作者によるお金を通した人生観は結構説得力があります。ある意味極めて普遍的なテーマなんでしょうけど,個人的にはどうしても自分の業界と結びつけて考えてしまいます。

カネのハナシは下品だという「教え」が生んだもので「ちょっと待て,いい加減にしろ!」って言いたくなることは,まだ,ある。
「人間はお金がすべてじゃない」「しあわせは,お金なんかでは買えないんだ」っていう,アレ。
そう言う人は,いったい何を根拠にして,そう言い切れるんだろう?
p176


「人間はお金がすべてじゃない」「しあわせは,お金なんかで買えない」という言葉だけを捉えるなら確かに間違っていはいませんけど,お金があれば解決することも実際のところかなり多いわけです。お金を出す側の人間が,お金がない状況を精神論で正当化する文脈でこの言葉を使うのは,まさに欺瞞でしょう。具体的に言えば,劣悪な労働現場から従事者が逃げ出しているのに対して,「やりがいのある職場にすることが大事」とかいうアレですね。


医師の場合は収入が高いという世間の先入観があって批判の対象になりやすいですが,単に他の職種との比較ではなくて,実際のところそれが提供している労働に見合ったものなのかどうかが語られることはあまりないように思います。そういう話題は医師自身がこれまで「下品」として封印してきた面もあるのでしょう。


当方が勤務医つまり雇われる側だったときは,給料はもっと少なくていいから病院の拘束から離れる時間が欲しいと思っていました。裏を返せば多く給料を貰っているのだから自由な時間がなくても仕方がないと諦めていたともいえます。今にして思えば,常勤医を完全にフリーにするためにはその分多くの医師を雇わなければなりませんから,病院側からすれば常勤医に多少高い給料を払ってもオンコールをさせておいた方が安上がりなのです。こういうのも,働く側がお金について深く考えないことによって誰かが得をしている,という一例なのかも知れません。