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年金破綻論争


少し前に週刊東洋経済の年金特集のなかで批判された鈴木亘氏がご自身のブログで反論を行っています。同誌上での反論は拒否されたのは残念ですが,こうして公開の場で議論が行われるのは有益なことだと思います。

反論の内容については,なるほどと思うところと違和感を感じるところが両方あります。厚労省あるいは社会保障国民会議によるシミュレーションはその計算の詳細が公表されていず恣意的である可能性が高いし,厚労省にとっては年金財政という省益を守るために恣意的な結果を導く動機がある,という指摘については,個人的には分野は違いますが要介護認定判定の件があるので一部同意せざるをえません。恣意的なシミュレーションが行われている可能性にを否定するためには,ロジックを公開して専門家の監視対象にするべきというのはその通りかと思います。

厚労省の主張の中心は、「国民年金の未納者には、将来、年金が支払われないために、年金財政への影響は軽微であり、未納者の増加は問題ではない」というものであるが、この論理をさらに先に進めると、「国民年金において『全員』が未納者となり、保険料を全く払わなくなっても年金財政には影響せず、だから問題ない」ということになってしまう。つまり、「全員が無年金者になるので、問題ない」というわけであるが、この主張が如何に馬鹿げているか、一目瞭然だろう。

未納は問題ではないという主張が如何に馬鹿げているかこれを読めば誰にでも瞬間的に理解できる,とあるのですが,申し訳ないですがどうもよく分かりません。「未払いによる年金破綻は起きない」というのは,年金加入者に関しては影響がないという話で,年金未加入者を放置してもよいとは言っていないでしょう。週刊東洋経済の元記事では,未加入者をなくすために年金制度そのものを変えるよりも,年金制度から漏れてしまうような方は年金以外の社会保障政策によってカバーすることを考えるべきだ,という主張がされていたはずで,そこに対する反論としては違うように思えます。

未納による保険料収入の減少が、未納者が将来年金を受け取らないことによって完全に減殺されるのであれば、その影響は最終的には存在し無いないであろう。しかし、既に述べたように運用益と世代間不公平の部分を通じて、全ての年金財政に多少とも損する影響が出るのであるから、東洋経済のように、肩代わりしていないとまで主張するのは、明らかに間違いである。

影響が完全にないというのは間違いかもしれませんが,少しでもあれば全否定するのもこれまた極論です。実際問題としては,どの程度の影響があるのかを評価したうえで,制度を変更するコストとのトレードオフということになるのでしょう。

全体として極論めいた話が多いように思えますが,専門的議論を非専門家にも分かりやすく単純化する上では仕方ないのかもしれません。とはいえ,非専門家にとっては議論の内容だけでなく,議論の論理構成そのものに納得できることも結論を支持する根拠となるでしょうから,単純化も程度問題です。当然これは当方が専門家として説明を行うときにも自戒しなければならないことでもありますけど。