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医療ADRに関する会議


医療紛争において裁判という手続きは「真実」を究明するためのものではなく,当事者にとって納得のできる解決ができるとは限らない以上,それ以外の解決方法が求められるのは当然でしょう。そうしたなかで,厚労省で下記の会議が開催されるとのことです。


第1回医療裁判外紛争解決(ADR)機関連絡調整会議の開催について

診療行為に関連した医療事故等が発生した場合、医療機関と医療を受ける側の紛争解決手段の一つとして、専門的な知見を反映して迅速な解決を図る手続としての裁判外紛争解決(ADR)機関の活用があります。
裁判外紛争解決(ADR)機関の活用を推進するため、医療裁判外紛争解決に係る情報共有・意見交換を行うことを目的に、裁判外紛争解決(ADR)機関、医療界、法曹界及び患者団体等の代表者からなる連絡調整会議を開催するものです。

ADRの利点としては,厳密に争う必要のない事例について迅速な解決を図ることができる一方で,事実を整理して裁定することが簡単にできないような事例においては,当事者同士が妥協点を探すような解決が期待できるという点にある,と当方なりに理解しています。医療紛争は後者にあたり,メディエーションのような対話を促進する手法を紛争初期から活用していくのが望ましいと考えます。ちなみに医療事故調の民主案は,まだ検討すべき課題はあるにしても,司法手続きに進む前に院内で当事者間の対話による解決という段階が組み込まれている点を評価していいと思います。

それを踏まえて上記の説明を読むと,医療ADRの説明が「迅速な解決を図る手続」だけというのは一面的な感じを受けます。たとえば紛争初期の段階で弁護士が調停案を示すことで,患者側,医療側ともに納得に至らず,むしろ感情面でのコンフリクトが強まってしまう可能性はあるでしょう。一般に弁護士のかたは職業柄紛争解決に手慣れているという面はあるのでしょうけど,場合によっては弁護士以外の職種が主導したほうがうまくいくとも考えられます。

ADRを推進するために2007年にいわゆるADR法が成立したのですが,そこで規定されるADRはあくまで裁判の下請けでしかないという指摘もあります。言われてみると「医療界、法曹界及び患者団体等の代表者からなる連絡調整会議」とはいうものの,招集された顔ぶれのほとんどが法曹関係者であることが気になります。

たしかに「迅速な解決」の件数が増えることで,その結果が和解なのか訴訟に発展するのかは別にして,弁護士をはじめとした法曹関係者の活躍の場は広がることは期待できるのかもしれません。とはいえ,法的手続きは当事者が納得するための方法の一つに過ぎないわけですから,当事者の一方である医療側代表が少なすぎることに懸念を覚えます。

また,参加メンバーのなかに「医療過誤原告の会」の会長もいらっしゃるようです。ADRという場は当事者をはじめから「被害者」「加害者」に分断するものではありませんし,そのことは当然ご理解されたうえで議論に参加するものと思っています。また,慎重な検討のうえで「有罪か無罪かの判断を目的とする刑事裁判では、再発防止の教訓をくみとることに限界がある」という結論に達した医療問題弁護団代表も会議に加わっておられるようなので,その知見がどのように生かされるのか,ひとまず議論を見守りたいと思います。