開業医も動員3


先日から頭の中に「お前のように勤務医から脱走して開業するような輩が全ての元凶だ。24時間オンコールの呪縛からはにげられないぞ」という声がはっきり聞こえるのですが幻聴でしょうか。冗談はともかく,開業医動員の件ですが,「今後は...」といった曖昧な言い方ではなく,はっきりと期日を明記してきました。単なる観測気球ではなく既定路線となったように思えます。日医執行部も全面協力していることでもあるし。

  • 追記(5/1):2008年度からということは以前の報道から明記されてました。当方の勘違いです。

 厚生労働省は「在宅医療」を充実させるため、24時間体制で往診や看護に応じる開業医の診療報酬を2008年度から引き上げる方針だ。外来患者の診療に頼って在宅医療に取り組まない開業医の診療報酬は抑え込む。費用のかかる入院を減らして自宅での療養を促すのが狙いで、医療費の膨張を防ぐ。

 7月にも厚労相の諮問機関の中央社会保険医療協議会中医協、土田武史会長)に提示する。08年4月の改定に向け、来年初めまでに引き上げ幅などを詰める。

在宅医療の報酬上げ・厚労省方針、入院減らし医療費抑制 NIKKEI NET(cache)


尻に火がついた開業医を24時間在宅医療に追い込むという作戦は見え見えなのですが,とりあえず当方がとりうる選択肢は2つ*1。ハシゴ外しは覚悟の上で厚生労働省のもくろみ通り総合科医(こんな言葉聞いたことないしATOKでも変換できません)という資格を取って収入増を目指すか*2,あえて取らずにさらに収入を減らすか。まあ後者でしょう。きっとこんなことだろうと思い開業継承にあたり追加投資はほとんどしていませんが,それでもかなりきついことにはなりそう。そのうちハンドルネームをDr.Poorに変更することになるかも知れません。

*1:臨床から足を洗うとか勤務医に戻るというのもありますがそれは最後の手段として...。

*2:24時間対応するために必要な投資に見合った報酬増額だと仮定してですが。

総合科医とは


問題の総合科医なんですが,上でも引用した読売新聞の記事によれば

 総合科は、「熱がある」「動悸(どうき)や息切れがする」「血圧も高い」など一般的な症状の患者の訴えを聞き、適切に治療したり、専門医に振り分けたりする診療科を指す。同省では、開業医の多くが総合科医となり、いつでも連絡がつくかかりつけの医師として、地域医療を支える存在となることを期待している。

 能力の高い総合科医が増えれば、初診の患者が安心して総合科を訪れるようになり、「3時間待ちの3分診療」と言われた病院の混雑緩和にも役立つ。例えば、疲労を訴える高齢者が総合科を受診した場合、高血圧など基本的な症状の改善は同科で行い、心臓などに深刻な症状が見つかれば、速やかに専門医につなぐ仕組みを想定している。


ということで現在の一般内科開業医程度の機能を想定していることが分かります。であればなぜわざわざ総合医の認定をする必要があるのか理解に苦しむところです。憶測なのですが,医療側に対しては「総合医なんだからどんな患者でも24時間対応しなさい」,患者側には「総合医という何でも診てくれる医者を認定したからそちらを受診しなさい」という誘導をしようとしているのではないかと思います。とはいっても対応できない疾患については専門科を紹介するしかないのは現状と変わりなく,患者さん側にメリットはなさそうです(はじめから専門科を受診していれば...という不満は生じるかも知れませんが)。


個人的には新米開業医ではありますが現在でもかかりつけで状況を把握できる方については往診や訪問診療,電話相談には極力対応しています。しかし「いつでも対応するのが当たり前」となると事情は全く異なります。休んでも自分の代わりのいない診療所で常時オンコールというのは正直恐ろしいことです。診療報酬で補償はすると言われてもこれまでの数々のハシゴ外しを踏まえるとそんな甘言に飛びつく勇気はありません。勤務医であっても開業医であっても自分の能力を越えたことに手を出すと結局患者さん側に迷惑をかけることになると考えます。


新聞記事だけを読むと「結構良いこと言っている」という感想をお持ちになるかたもいるようなので,当方がこの制度に対して持っている考えをエントリにしました。医療関係者の皆さんにとっては何を今さらという内容ではあるかもしれませんが。