看板の掛け替え


数日前から話題に上がっている診療科名再編の件ですが,意図するところがどうもよく分かりません*1。現行の診療科名が複雑で分かりにくいのはその通りかも知れませんが,そもそも総合科を新設したのは初診の患者さんが専門科を最初から受診しないのが目的のはずです。総合科を新設した上に診療科を整理統合するのはどのくらい意味があるんでしょうか。患者さんからすれば,結局「内科」にかかった方がいいか,「総合科」にかかった方がいいか迷ってしまうのでは。まあ総合科のことは別にしても,

腹痛を起こした際に内科、消化器科、胃腸科のどこに行くべきかなど、患者が受診科に迷うケースが出てきた。

腹痛の時「内科」「内科(消化器)」「内科(胃腸)」と標榜していればどこにかかればいいのか迷わないんでしょうか...というツッコミもあるでしょう。


標榜している診療科と診療内容に乖離があるケースは確かにあって,それが問題なのであれば*2診療内容を判断できるシステム*3を整備するべきだと思います。現実には医療が高度専門科・細分化している以上は機械的に診療科を整理統合したらその乖離は改善されずむしろ助長されると思われます。患者サイドからすれば何らメリットのない話です。


ここから先はネタになるのですが,基幹病院が崩壊寸前となった自治体にとっては好都合かも知れません。「循環器の医師3名が全員退職した」ではなくて「内科医が3名退職して残り4名となった」と言った方が対外的には面目は保たれます。残された医師にとってはちっとも好都合ではありませんが。


ネタのついでに,当方のような弱小診療所にとっては耳寄りな情報が。

また、小規模な診療所が表示できる診療科名を、医師1人当たり原則2つまでとした。

「総合科をやれといわれても当院ではすでに内科・小児科を標榜していますから...やりたいのは山々なんですが...」と言いながら総合科を回避することが可能かも。



以下m3より引用。

基本診療科名を26に整理 明快さ重視、厚労省 専門分野の付記も (1)

 医療機関が表示する診療科名が複雑で分かりにくいと批判があることから、厚生労働省は21日、現在ある38の診療科名を、内科、外科など26の「基本的な診療科名」に整理する方針を固めた。数を絞り込む一方で、専門分野を自由に付記できることとし、患者への分かりやすい情報提供を目指す。

 同日開かれた医道審議会の部会に素案を提示。合意が得られれば政令を改正し、本年度中にも新しい表記法を立ち上げる方針だ。

 診療科名については1948年の医療法制定時に内科、外科、小児科など15種類の表示が認められたが、年々増加。腹痛を起こした際に内科、消化器科、胃腸科のどこに行くべきかなど、患者が受診科に迷うケースが出てきた。アレルギー科やリハビリテーション科など、専門的な表示も広がっている。

 素案では、臨床技術が確立し、診療科名が定着しているとされる内科、小児科、皮膚科、精神科などのほかに、新たに設ける病理診断科(臨床検査科)、救急科などを加えた計26種類を基本的な診療科に指定。消化器科や循環器科などは除いた。

 また、小規模な診療所が表示できる診療科名を、医師1人当たり原則2つまでとした。

 一方、アレルギー治療、人工透析などの治療法や、治療する部位も自由に付記できるようにし「内科(一般、アレルギー)」「整形外科(リウマチ、腰痛)」などの表示を認める。

 内科、小児科などの幅広い診断能力を持ち、患者の初期診療に当たる「総合科」も新設。麻酔科と同じように、厚労相の許可を義務付ける方針。

「一目で分かる表示に」 診療科見直し、現場反発も (2)

 「食物アレルギーの子どもをアレルギー科に連れて行ったが、皮膚症状しか診療できないと言われた」。病院の看板にずらりと並ぶ30以上の診療科名。医療技術の進歩、細分化とともに耳慣れない専門用語も多くなり、厚生労働省は21日、見直しに乗り出した。

 「一目で分かる表示にしたい」と同省は意気込むが、診療科の数が減ることに医療現場からの反発も予想され、見直しがスムーズに進むかどうかは未知数だ。

 現在の診療科は学会や医療団体の要望を受け、国の審議会が検討してきた。呼吸器科、消化器科、循環器科など、もともとは内科に含まれていたものが〓独立〓したケースも多く、厚労省は「木の幹となる診療科をはっきりさせ、枝葉の部分と区別したい」(医政局)としている。

 この日開かれた医道審議会の部会では、厚労省案について「各病院には救急部門があるのに、救急科も新設する必要があるのか」「総合科のイメージが分からない」などの意見が出た。

*1:あえて分からないように記事を書いているんでしょうけど。

*2:個人的には専門外の診療でマンパワー不足を補うなど,デメリットよりメリットが大きいと考えます。

*3:これはこれで相当難しいとは思いますが。