原発事故と労働衛生管理


原発事故の対応で過重な労働環境が予想される現場に,医師が派遣されることになった模様です。

 厚生労働省小宮山洋子副大臣は27日、福島第1原発事故に対応する作業員の健康管理を充実させるため、29日以降、各地の労災病院から医師を派遣し、24時間体制で診療に当たると発表した。

 厚労省によると、福島第1原発では、日によって午後4時から翌日午前10時の間、医師が不在になる状態が続いていた。この時間帯を各地から派遣される医師がカバーし24時間体制とする。

 また、事故対応で作業員の監督などに当たる特殊・高度技能者の不足が見込まれることから、厚労省労働基準局長が27日、経済産業省原子力安全・保安院長に対し、早期の技能者養成を求めた。

 養成には5〜10年かかることから、短期間で人員を確保するため(1)運転を停止した浜岡原発(静岡県御前崎市)の技術者による応援(2)高速増殖炉原型炉もんじゅ福井県敦賀市)の技術者を活用(3)OBの再雇用―などを提案した。

24時間体制で健康管理へ 福島第1原発に医師派遣

魚拓

「作業員の健康管理を充実させる」ということなので,産業医としての役割を託されていると思われます。具体的には,現場の作業環境や勤務体制を監視して,健康に影響があると判断すれば事業主に改善を申し入れるという役割になるのでしょう。診断・治療にも携わるのかもしれませんが,実際に現場でできることは限られていますから,必要があれば外部医療機関を受診ということになると思います。

一般に産業医は,事業主に対して直接労働環境の改善を意見できる点で他の従業員と比べれば強い権限を持っているといえますが,それを実行に移すうえで必要な人事権もありませんし,経営にも口出しはできません。あくまで労働者の健康管理の責任は事業主にあります。つまり,医師がいくら24時間カバーしようが,それで現場の作業員の健康管理が充実するかどうかはあくまで事業主である東京電力次第であることは注意する必要があるでしょう。

そんなことは派遣を決めた厚労省の方々は十分ご理解していると思いますが,それを伝えるメディアとその受け手が,医師を派遣したらそれで健康管理の責が果たされたと認識している一方で,現場では「これでは作業員の健康に影響があるので改善を」「無理です」みたいなやりとりにならないか,心配になるところではあります。