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外来自己負担の増額は医療費を抑制しない?

医療政策


米国高齢者の外来自己負担の増額で、入院が増加。 - 疫学批評

米国の65歳以上が加入する連邦政府医療保険メディケアを運用し、2001−2006年に外来診療の患者自己負担額を増額した18医療保険組合と、増額しなかった18医療保険組合を比べたところ、増額から1年後に加入者100人あたりの外来受診件数は減ったが、入院件数、入院日数、入院者の割合はかえって増えた。論文はNew England Journal of Medicine 2010年1月28日号に掲載された。

原著論文はこちらです。

Increased Ambulatory Care Copayments and Hospitalizations among the Elderly - New England Jounal of Medicine

外来患者の自己負担を増額することで利用を抑制することはできたけれども,入院数,特に低所得者や慢性疾患を有する加入者の入院が増加することで相殺されてしまうというという結論です。医療経済の分野ではgold standardであるRAND研究では外来利用を抑制するインセンティブを設定することで外来受診回数,入院数ともに減少したとされていますが,今回の検討とは社会情勢が違うことと,対象に高齢者があまり含まれていなかったことが指摘されています。一方,本研究も調査期間と対象数をさらに拡大することでさらに検討する必要があるとしています。

Increasing copayments for ambulatory care among elderly patients may have adverse health consequences and may increase spending for health care.

高齢者が自己負担を嫌って外来受診を控えることで健康を害してしまい,むしろ医療費は増加するのではないかという考察は注目に値します。「高齢者の医療費がこれ以上増えたら国の財政が危ないので抑制しなければいけない」という医療費を負担する側によくみられる意見への反論として「必要な医療は受けられるようにするべきだ」という理念だけはなく「医療費をけちったらかえって国への負担は増えるかも」という損得勘定を提示することはかなり有効な気がします。もっともそういう調査をする金すら惜しんでいるのではどうしようもないですが…。