残業代請求訴訟


くらいふたーんさんのブログ経由で知った記事です。北海道新聞地方版に載っていたとのことですが,Web上では全国紙は勿論北海道新聞にも見あたらず,紹介されていた日刊スポーツだけです。


帯広病院の残業代請求訴訟が和解(cache) - Nikkansports.com 2007年9月5日

和解調停書には、病院作成の残業簿の記載に、勤務実態と異なる部分があったことを機構が認める文言が盛り込まれる。

医師は残業簿の記載をめぐっては、虚偽公文書作成の疑いで病院幹部らを釧路地検帯広支部に告発したが、ことし3月に不起訴処分となり、帯広検察審査会に異議を申し立てている。

医師にタイムカードが採用されている病院は聞いたことがなく,大抵は残業は自己申告だと思うのですが,残業簿と実態が異なるというのは単純に残業したことを医師が申告していないか,申告しても病院側が残業として認めなかったのかのいずれかでしょうか。医師側は後者,病院側が残業簿に虚偽を記載したと主張しているようですが,告発が却下されたというのは前者であると認定されたと言うことなのかも知れませんがこの記事だけでは分かりません。

医師の時間外勤務が把握されていないことによる問題としては,勤務に見合った報酬が受け取れないことによる労働意欲が低下は勿論,労働者である医師自身の健康にも影響してきます。今年2月の道内の小児科医師の過労死*1でもその点が問題視されていたと思います。

普通の企業でも残業代不払いや過労死は問題であり医師だけが特別ではない,という意見も有るかと思います。ただ医師にかかる精神的肉体的負担のために本来の医療行為に影響が出ることが重要で,さらに言えば,現場の過重労働による医師のドロップアウトにより医師不足が悪循環に陥っていて,いずれも医療事故とは切り離せない問題の筈です。患者さんや患者の立場になる可能性のある一般の方が,医師の過重労働が結局はご自分の不利益になることを認識していただけているならいいのですが(多くの方はそうだと思いますが),なかには

医師不足は確かに問題だが、医療事故の被害とは別だ。医療側はまず、事故の真相を究明してほしい

医療クライシス:がけっぷちの産科救急/3 手探り続く「防止・補償」(cache)

という認識の方*2もいらっしゃるようなので心配です。そういう意味でもっと大きく取り上げられてもいい記事だと思うのですが,メディア側が大きな問題と考えていないのか,あるいは大きな問題にしたくないのかは分かりません。奈良の時間外手当請求訴訟がどうなるかも気になるところです。

*1:関連エントリ→■医師の過労死/■医師の過労死2。コメント欄もあわせてご覧下さい。

*2:ちなみに某シンポジウムに関する記事にも同じ発言がありましたので出典はこちらかと思われます。