開業医の時間外労働


勤務医の時間外労働の報道が大きく扱われない一方で,なぜかこういう記事は全国紙で取り上げられるのが不思議と言えば不思議と言えなくもありません。


時間外診療実態調査:「開業医の収入減らしか」 混乱の医療現場(cache) - 毎日新聞 2007年9月7日

茂松茂人理事は「厚労省調査では、昼間の努力が反映されない。開業医が夜診に積極的でない印象を与え、報酬を減らす方へ誘導する狙いがうかがえる」と話す。

例によってメディアのフィルターを通っているのでこのままの発言かは分かりませんが,昼間診療している医師が夜間も対応することが簡単ではないこと,夜間診療の報酬を増やせば他にどこかの報酬が削減されるだろうことはこれまでの政策からほぼ間違いないことを考え合わせれば妥当な回答ではないかと思います。そうした前提を説明せずにそのまま記事にすれば「開業医は努力せずに収入減には反対している」という印象を与えることも承知しているんでしょうし,内容と関係ない「混乱の医療現場」とか「収入減らし*1」というキーワードを見出しに織り込んでいるのはずいぶん露骨な印象操作です。

ここまであからさまでは,厚労省がわざわざ開業医が反発するようなアンケートを送付し,思惑通り反発した開業医をこうした記事で取り上げるというトラップじゃないかという邪推もしてしまいます。大阪医師会も拒否するだけでなく声明の一つでも出しておけばよかったのかもしれませんが。

*1:記事にある「報酬」とは保険診療における診療報酬のことで「収入」とイコールではないことも医療報道に関わる記者なら当然ご存じだと思います。