開業医の理想と現実


先日,北海道医師会による新規開業医へのアンケート調査が報じられていました。


「勤務に疲れ開業」4割 道医師会調査 「経営厳しさわかった」も8割(cache) - 北海道新聞 2008/03/22

複数回答で開業の動機を聞いたところ、「勤務に疲れた」が39・2%と最も多く、「労働時間が自由になる」とした人も16・8%だった。

一方、開業後の状況では「経営の厳しさがわかった」が最も多く、「過重労働から開放されていない」も五割を超えた。また、35%が「開業前の考えと現実が違った」としており、その理由として「従業員を抱え精神的に圧迫される」「診療報酬がどんどん下がり、経営が苦しい」「医師としてのやりがいは、勤務医のほうが上」などの声が目立った。肯定的にとらえている点では、「他の医療機関と連携しやすい」「収入が増えた」との声が多かった。


総合すると,勤務医生活の過重労働と束縛を嫌って開業したけれど,現実は厳しかった…という結果のようです。確かに現状の医療政策では経営は厳しいし,勤務医の頃には予想もしなかった現実もあるのはその通りで,アンケートの結果は開業医の一面を捉えているとは思います。無責任に「開業は素晴らしい。どんどん開業しよう」とはとても言えないのが正直なところです。

ただし,当方が「そんなに厳しいなら勤務医に戻りたいか」と質問されたらおそらく「いいえ」と答えるでしょう。救急外来の当直(という名の夜勤)とか,オンコール(という名のボランティア)というものがいかにストレスの原因になっていたのか,解放されてみてつくづく感じました*1。開業医もいろいろでしょうから,当院の置かれている「厳しさ」がまだまだ甘い,ということなのかも知れませんが。

せっかく開業医の皆さんにアンケートを行って6割近くの回答を得たのですから「今後勤務医に戻るつもりはありますか」という設問に対するもしあれば回答はどうだったのか,非常に興味があります*2。もし「経営の厳しさが分かった」けど「勤務医に戻るつもりはない」という結果であれば,記事の受け取り方はまた違うものになる筈です。

あと,肯定的な回答のパーセンテージを伏せているのも気になります。まあ,「どういう意図があって記事を載せているのか」という目で見てしまうのは悪い癖ですなんですが,何となく,昨年あたりから始まった「開業医=悪」キャンペーンの一環とも思えなくもありません。


 

*1:勤務医のストレスも人それぞれですから他に原因があるという方も当然いらっしゃると思います。

*2:確証はないですが「はい」という方はおそらく少ないでしょう。