条件整えば僻地もOK


久しぶりの報道ネタ。本日の産経新聞社説は要するに「僻地医療崩壊を何とかするためには医師に対して規制が必要」という主旨で,おそらく各所でツッコミが入ると思われますが,個人的に気になったのは次のくだりです。

見直し案は、地域偏在解消のため、病院が研修医を募集するときの定員に上限を設けることや、地域医療の研修を一定期間義務付けることを盛り込んだ。産婦人科や救急、外科など希望者が少ない診療科は一定の研修医を確保できるよう検討を進めるという。


こうした規制も、ある程度はやむを得ないだろう。検討会の調査だと医学生の多くも、給与など条件が整えば地方での研修も構わないと回答している。

【主張】医師不足 研修見直しにとどまるな - 産経新聞


前半は,都市部の研修病院に研修医が偏在しているという批判を踏まえて,研修医の集まる病院の募集を制限して,不人気研修先への研修を義務化するという意味だと思われます。研修医の配置を規制すれば僻地の医療崩壊を解消できるという前提からしてすでに破綻しているような気がしますが,百歩譲って研修医でもいいから頭数だけは揃えればいいと解釈しても*1,その根拠が

検討会の調査だと医学生の多くも、給与など条件が整えば地方での研修も構わないと回答している。

というのは無理がありすぎです。非医療者の方には説明が必要かと思いますが,僻地の研修を避けるのは地理的条件よりもむしろ研修する上での条件が悪いという要素が大きく,その条件も金銭とか住宅のように分かりやすいものよりむしろ,「医療業務に専念できるか」「ちゃんとした指導医がいるか」といった目には見えにくい類のものです。「給与など」とまとめられてしまうとそのあたりに誤解が生じると思われます。


まともな研修が受けられない僻地病院が実際には多いんでしょうけど,研修内容に定評のある研修病院は地理的要因とは無関係に研修医が集まっているのも事実です。「条件が整えば」そもそも強制配置する必要性がなくなる筈で,上の文章だと因果関係がまったく逆だと思います。論説委員がそのへんを判った上でこの社説を書いたのなら悪意のある歪曲ですし,判っていなかったとすれば認識不足でしょう。


*1:そういうのを世間では水増しとか偽装と呼びます。