小手先の対策


後期高齢者医療制度に対する反発が強い*1のにあわてたのか,低所得者に対する保険料を軽減する方針が発表されました。


高齢者医療改善策 追加軽減は困窮者に限れ - 産経新聞 cache

75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度長寿医療制度)について、与党が保険料の追加軽減措置をまとめた。
基礎年金額(年80万円)以下の収入しかない低所得者約270万人の保険料軽減率を現行の7割から9割に拡大する。それでも支払い困難な人には、制度を運営する都道府県の広域連合が個別に減免を講じたり、市区町村が相談に応じる。新制度への移行で負担が急増した低所得層の不安解消につながるものと期待したい。
だが、中所得層向け対策として、保険料の所得比例部分を一律軽減するのは行き過ぎだ。軽減に伴う必要財源は税金で賄われる。その多くは若い世代の負担となることを忘れてはならない。新制度は高齢者本人にも能力に応じた負担を求める仕組みだ。制度の理念をゆがめることにもなる。


制度に関して本質を捉えた報道がされず,批判も制度の枝葉に対するものが多くなり,結果として与党の対策も表層的になったのではないか,と思います。現時点で負担が重い,という批判を抑えるために保険料を軽減すれば,当然その分は他の誰かが負担しなければなりません。そうなれば社会の中で誰がどれだけ医療費を負担するかというバランスが変動するはずですが,それに関する議論はとりあえず後回し,ということのようです。


個人的にはある年齢以上で医療費の負担と給付の枠組みを別にすることの是非,ひいては誰がどれだけ負担するべきなのか,についてきちんと議論すべきだと思っているのですが,今回の対策ではそこは触れていません。このままいくと,「後期高齢者」の枠内でやりくりしようとすれば高齢者の負担を増やさなくてはならないし,かといって,それを穴埋めするために誰かの負担が実質的に増えるようであれば当然反発が生じますから,結局は今回のように,その時の世論の風向きを伺いながら軌道修正を繰り返す羽目になるような気がします。


 

*1:マッチポンプ的な報道が影響しているようにもみえますが。