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日本の医療はなぜ私たちをラクに治してくれないのか


特集の見出しに釣られて買ってみました。責任編集はあの渋谷陽一氏。最近音楽系雑誌は御無沙汰でしたが,こんな雑誌も手がけてたとは今回初めて知りました。


SIGHT (サイト) 2008年 10月号 [雑誌]

SIGHT (サイト) 2008年 10月号 [雑誌]

編集長による特集の前文(p.12)より引用。

どうして日本の医療は患者をラクに治してくれないのだろう。その素朴な疑問がこの特集のスタートであった。こうした現場を憂い,問題提起をされている医師,そして実際の医療活動の中でこうした現状と闘っている医師,そうした方々のお話を聞く中で,日本の医療体制の後進性を浮かび上がらせて行こうとしたのである。しかし実際の取材活動の中で浮かび上がってきたものは,もっともっと重い問題であった。それは,我々自身がどう病と向き合い,そして死と向き合っていくのか,という問題であった。この特集のタイトルに即していくならば,なぜ日本の医療は患者をラクに治してくれないのか,といえば,答えは病気はラクに治らないから,という事になる。何の救いもない結論だが,それが一番正しい答えなのだ。


特集記事の対象としたテーマは医療崩壊,ガン難民,ホスピス,新薬認可など多岐にわたりますが,マスメディアにありがちな「誰が悪いのか」ではなく,「患者(あるいは国民)が問題に対してできることは何か」という姿勢が貫かれているあたりに好感が持てます。編集者としては,医師側を闇雲に叩くことはせず,かといって医師を過剰に擁護しないような立ち位置を保とうとしているような印象を受けましたが,それはそれでひとつの見識でしょう。


患者(あるいは国民)が医療を受ける当事者として考えなければならないというのは,非常に真っ当ではありますが,患者(あるいは国民)にとってはあまり聞きたくない主張ではあると思われます。それをあえて全面に出せるのは,自由にものが言えることがある程度許容された雑誌だからなのかも知れません。


この特集の肝は内田樹氏のインタビューでしょう。ロハスメディカルでの小松秀樹先生との対談でも同じような話題が出てきましたが,日本人の死生観の変化や医療に対する過剰な期待が医療崩壊の背景にある,という内容で,当方もかなり同意するところはあります。ただ,そうなると崩壊を何とかできるかについては,かなり悲観的にならざるを得ませんが…。