スカイウォーカーの夜明け

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

このブログも更新頻度がどんどん低下していますが,医療とか社会保障の話題だとどうしても下調べで止まってしまうので,このあたりで本や映画といった本来の日記路線に戻ってみようと思います。というわけで今回は年末に鑑賞したスターウォーズエピソード9の感想です。 

前作を観たときは「予想外の展開だけど一体この後どこに着地するつもりなんだろう…」と不安にかられましたが,今作で一応破綻せずに話がまとまったので安心した…というのが正直なところです。「スカイウォーカーの夜明け」って一体何のことだろうと思っていたけど,終わってみたら確かに「スカイウォーカーの夜明け」と呼ぶにふさわしい終わりかたで,よかったのではないでしょうか。個人的には満足です。

ただ冒頭,恒例のタイトルからプロローグが始まってすぐ,ある人物の名前が出てくるところで個人的には「え?」という唐突感がありました。これはきっと前作で何か伏線が張ってあったのを見逃していたんだろうと思い,帰ってから一度エピソード7・8を見返してみたのですが,特にそれらしい箇所は見当たりませんでした。もしかしたら前作製作後に軌道修正とかがあって設定が後付けされたのかもしれませんが,どうも釈然としないところです。

あと細かいことですが,主人公が解読して重要な手がかりとなる本ですが,あれって前作で燃えてなくなっていたはずなのに,いつ回収したんだろう…と余計なことが気になってしまいました。どうでもいいですね。

人生という名の会議

小籔さん起用の「人生会議」ポスター、批判受け発送中止:朝日新聞デジタル

人生の最終段階でどんな治療やケアを受けたいかを繰り返し家族や医師らと話し合っておく取り組みの普及啓発のために厚生労働省が作ったポスターに批判が多く寄せられている。厚労省は26日に予定していた自治体への発送をやめ、ホームページへのPR動画の掲載も見合わせた。

 厚労省が意思決定のプロセスであるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)の日本版として「人生会議」を社会に周知するためのポスターが炎上しているようです。ポスターで伝えようとしている「余命の少ない患者さんが自分の望みをあらかじめ家族に伝えておけばよかったと後悔するストーリー」も確かにACPの一面といえますが,そこをことさらに取り上げたことが批判されているのだろうと思います。「人生会議」というくらいなので,死の間際だけでなく人生の節目節目で対話がなされるほうがいいし,結論として「家に帰る」が前提とは限らないわけですから。

 そもそもACPを導入したらそれで本人も周囲も納得できる結末を迎えられるのかといえばそんな単純な話ではなく,今でも最後まで迷ったり後悔しながらも何回も話し合ったのだからこれでよかったのだ,とせめてもの納得を得る…ということはあるでしょう。そうした人にとってあのポスターが「よく話し合わないから後悔している」というメッセージになると,大変つらいことになってしまいます。

 記事中でも指摘されているように,厚労省としては社会に「刺さる」ような広告にしたかったのでしょうけど,もともと意思決定のプロセス自体は実際のところ個別性が高い上にやっていることは地道な対話なので,インパクトのある絵面とは根本的に相性が悪い気がします。どうしてもやろうとすればあのポスターのように一面的なメッセージになってしまうのでしょう。ACP自体がそうであるように,社会に対しても地道な周知を続けるしかないのかもしれません。

 

参考:

「人生会議」してみませんか|厚生労働省 現在修正済み

厚生労働省の「人生会議」PRポスターに抗議しました of 卵巣がん体験者の会スマイリー

アドバンス・ケア・プランニング いのちの終わりについて話し合いを始める(PDF)

2018年のまとめ

あけましておめでとうございます。

いつも年末にはその年のまとめエントリをあげていたのですが今回はすっかり忘れていました。年も変わってしまいましたが,一応恒例なのでやっておこうと思います。

 

2018年の一冊 (ノンフィクション部門)

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

 

 ノーベル経済学賞でも注目された行動経済学ですが,情報の非対称性や不確実性の要因が大きい医療現場でそうした知見を生かそうという発想は自然です。本書では行動経済学の基礎知識(プロスペクト理論,限定合理性,ヒューリスティックスなど)が具体的に解説されていますが,特に意思決定の場面で,リバタリアンパターナリズムの立場から「ナッジ」を医療現場で活用することの意味(単なる誘導とどう違うのか?)に関する一節は,大変興味深いところです。

 正直一冊選ぶのに相当迷ったので,他の候補もご紹介しておきます。

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

どもる体 (シリーズ ケアをひらく)

 

 エビデンスとは別のアプローチから患者さんの世界を探索する方法論が新鮮で,一気に読んでしまいした。

 本書は前回(といっても4月ですが)のエントリに取りあげています。リテラシーだけの問題に終わらせていいのかという問題提起が印象に残りました。

 

2018年の一冊(フィクション部門) 

リウーを待ちながら(3) (イブニングコミックス)

リウーを待ちながら(3) (イブニングコミックス)

 

 同じようにパンデミックを題材にした「ファイナル・フェイズ」という作品とストーリー的には重なっていますが,本作は全3巻ということもあって物語はより重層的で,また隔絶された区域の内部だけでなく社会への影響(感染への差別)まで描いています。専門的でありながらちゃんと面白い作品だと思います。

 

2018年の一枚

SOUL SIDE OF TOWN

SOUL SIDE OF TOWN

 

 バンドの要であるベースのフランシス・ロッコ・プレスティアが肝移植,ドラムのデビッド・ガリバルディが股関節の手術で一時離脱していましたが無事復帰,本年結成50年の節目に新作が出るというだけで個人的には十分なのですが,内容にも衰えがみられないのはさすがとしかいいようがないですね。

 

以上2018年のまとめでした。本年も変わらずご愛顧のほどをよろしくお願いします。