私見

福島県立大野病院事件公判

先週は思い切りフライングしてしまいましたが,本日論告求刑です。医療の不確実性の結果として起こった不幸な事故が「過失」であるという司法判断が下されることがないことを切に望みます。 以下は司法には素人である一医療者としての私見です。医療側と司法…

地域の連携

先日,在宅ケア関連の集まりに顔を出す機会がありました。ケアマネージャー,訪問看護,在宅介護サービス,介護施設,保健師,社会福祉士など職種は様々で,仕事上顔見知りの方もいれば初対面の方もいましたが,普段聞けないような率直な意見が聞けたのは収…

放送メディアの検証

医療崩壊関連の番組がこのところ各局で放映されているようですが,最近はめっきりテレビというものを観なくなってしまった*1のであとからネットで初めて番組の存在を知ることが多くなりました。話した内容や表示された文字(テロップとかフリップとか)はまだ…

切れ目のない医療という幻想

産経新聞の「主張」というコラムより。 高齢者医療 問題点を直視し改善図れ(cache) - 産経新聞 2008/03/10 内容については厚生労働省見解をほぼ代弁するものでいまさら特筆すべき事はないのですが,以下の一節が個人的にちょっと引っかかったのでコメントし…

医療崩壊と技術の継承

先日のエントリ■見えざる脅威に対して暇人28号先生から頂いたコメントが過去エントリに沈めるにはもったいないと思い,新しくエントリを立てさせていただきました。以下コメントを一部再録します。 このまま皆保険制度の維持を無理強いすれば、医療崩壊は際…

見えざる脅威

<社会保障国民会議>公的保険適用対象、大きくは広げぬ意向(cache) - Yahoo!ニュース 2月26日 政府の社会保障国民会議の吉川洋座長(東京大大学院教授)は26日の同会議分科会で、患者の自己負担分も含めた国民医療費(05年度33兆円)が今後も伸びてい…

医療制度の行く末を決めるのは誰か

産科医療のこれから - 医療制度崩壊の元凶 高村薫 地方紙の記事をWebにあげて頂いた僻地の産科医先生に感謝します。お陰様で素晴らしい文章を読むことができました。筆者の的確な現状認識と分析にも感服ですが,個人的には次のくだりに感銘を受けました。 国…

医療安全調査委員会と行政処分

厚労省:医療機関に改善命令 死亡事故で法改正へ(cache) - 毎日新聞 2008年2月21日 過失による医療死亡事故が起きた場合、現行では行政が医療機関の責任を追及することはなく、医師個人への医業停止処分なども刑事事件化されたケースにほぼ限られている。し…

2.18

2.18共通メッセージ http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080218 http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2008/02/2_d5f1.html http://ameblo.jp/med/entry-10071134731.html 私見 福島県立大野病院「事件」が刑事事件として扱われたことは,被告人となった産科医師…

裁判官と市民感覚

id:Yosyanさんのエントリで個人的に興味深い一文があったのですが,長いし話の本筋から外れるように思いますのでこちらでコメントさせていただきます。あくまで司法に関しては素人の感想です。 10年ぐらい前に司法改革と言う流れが出たそうです。私はうろ覚…

医療費の痛みを味わう

当方の個人的な見解ですが,医療や福祉などの生活に必要なサービスは社会に広く分配されるべきで,そのために社会保障のシステムが存在すると考えているのですが,であれば給付とそれに対する負担の範囲は広い方が望ましいはずです。実際には事務的な手間な…

医局の法人化

北大産婦人科…法人化、医局像一新狙う - 読売新聞(cache) 2008年1月13日 大学医学部の医局は、各診療科ごとに設置されている医師の団体で、関連病院への医師派遣の調整や、若手医師を教育する役割を担ってきた。 一方で、不明朗な寄付金の処理や、強権的な医…

後期高齢者という線引き

医療を初めとする社会保障の財源は無尽蔵ではありませんから,適切な配分を行うのは必要なことです。医療資源を適切に配分するということは,有り体に言えば医療を受けられる方と受けられない方のあいだに「線引き」を行うことに他なりません。それを決める…

謹賀新年

新しい年を迎え,当ブログもはてなに移転後1周年となります。昨年中は多数の*1アクセスを頂き誠にありがとうございました。 以前の記事を改めて読み返してみたりしたのですが,医療崩壊が顕在化して社会問題として認知される一方で,医療者と非医療者の認識…

肝炎患者の救済2

限定救済、原告は拒否 大阪高裁、和解案提示 薬害肝炎(cache) - 朝日新聞 2007年12月14日 今回の「薬害」肝炎訴訟で救済の対象となったのはフィブリノーゲン製剤による肝炎患者のごく一部ですが,フィブリノーゲン製剤にしても数ある血液製剤の一つにすぎな…

専門性の壁

これまで大野病院「事件」の経過を追ってきた感想。医療に限らず,非専門家の方々にも専門領域に関する知見をある程度は理解して頂かないとならない世の中になっているんでしょうけど,事実を正確に認識しようとすればするほど越えられない専門性の壁という…

日本医師会の大罪2

来年度の診療報酬改定に関する交渉の中で,初診料と再診料の引き下げは見送られるようです。いまのところ引き上げられるかは不明ですが,据え置きだとしても引き下げよりはましなのは確かです。ただその一方で他のいくつかの重要な論点について,日本医師会…

日本医師会の大罪

周産期医療の崩壊をくい止める会 - 小松秀樹医師より 開業医と勤務医の大同団結を説く声をよく聞く。従来、その立場をとってきた友人が、今回の日本医師会の行動をみて、医師会に期待することの限界を感じたと連絡してきた。そもそも、勤務医が医師会の第二…

時間外受診の抑制

時間外救急:軽症者から8400円特別徴収…埼玉医大計画(cache) 毎日新聞 2007年11月11日 同センターによると、時間外の救急患者は94年に年間約1万人だったが、06年は約4万人に増加した。診療体制がパンク寸前になったため、軽症の受診者数を減らす方…

医局を辞めるということ

医局というのは良くも悪くも人と人の繋がりで成立してきた面もあって,うまく回っているうちは個人の利害とか不満を吸収しながら医師の集団がまとまっているのですが,状況変化に適応できず,いったん悪循環に陥るとあっけなく瓦解するような気がします。辞…

「かかりつけ医」ではなく「主治医」らしい

厚生労働省社会保障審議会の特別部会で高齢者医療制度の骨子が昨日まとまったようです。議論の中で「かかりつけ医」という言い方に物言いがついたらしく,「主治医」に変更されたとのことですが,名称がどうであれ,その役割に関してどのような議論が行われ…

医療費の財源問題

毎度のことながら政治経済は専門外...というより全くの素人ですので,不適切な点があればご指摘頂けると幸いです。 政治的事情により高齢者医療費自己負担が棚上げとなり,浮く筈だった分をどうやって穴埋めするかという話になっている模様です。患者が直接…

禁煙論

id:NATROMさんのエントリ■喫煙者の壁にTB。 以下は当方の個人的な見解です。ちなみに非喫煙者です。タバコが嗜好品であり今のところ合法的である以上,身体に与える影響を理解した上で喫煙することには関知できません。アドバイスを求められたら現在判ってい…

映画『シッコ SiCKO』感想

先程映画館に行って観てきました。いろいろ考えるところのある映画でしたが個人的には,アメリカ医療保険の問題点を指摘する口調は激しいものの,最終的には「自分たちの社会保障制度をどう考えるのか?」という問いかけがテーマだと受け取りました。カナダ,…

受診制限による医療者の負担軽減

前回のエントリで「医師の待遇改善をするには受診制限しかない」というコメントを頂きましたが,医師の負担が余りにも大きく受診制限せざるを得ない事例というのは確かにあります。その場合,病院側にすれば外来診療による収入減という損失はもちろんのこと…

医師の交代勤務

医師の交代勤務を支援へ 導入病院に補助金 厚労省(cache) - 朝日新聞 2007年08月21日 同省では、交代勤務を導入した病院に対し、こうした補助金だけでなく、診療報酬の上乗せも今後検討する。 どこまで本気なのか分かりませんが,これまで実態を見ないふりを…

最後は自宅で2

明日の私:どこで死にますか 第2部・在宅療養支援診療所 1 最期は自宅で(cache) / 2 往診3万5000回(cache) / 3 自宅介護の悲劇(cache) では、「どこで最期を迎えたいか」−−。厚生労働省の意識調査(03年)では、病院が最も多く38・2%。老人ホ…

まっとうな認識

2006年度の医療費0.1%増・”微増”に潜む問題とは - 日経ブロードバンドニュースMTL先生のブログモントリオール帰りの脳外科医の日々で紹介されていたニュース解説です。詳しい内容はこちらをご参照下さい。多くの報道は漠然と「医療費が増大して国の財政を圧…

ウイルス性肝炎と予防医療

肝炎検査の委託、東京と福岡のみ 自治体、負担増嫌う(Cashe) 朝日新聞 2007年07月24日 肝細胞癌は特定の発癌因子が分かっていて予防する手段もあるわけですから,まさしく厚生労働省の提言する予防医療の対象だと思います。一番多いC型肝炎について言えば感…

情熱大陸

情熱大陸 - 村上智彦(医師) 医師・村上智彦(むらかみともひこ)、46歳。 財政破綻の夕張市で、医療を変え、まちを変えようと本気で取り組む男だ。委託費など市からの資金は一切出ない中、累積債務の清算がおよそ45億円にのぼった夕張市立総合病院の運営を引…